抄録
人工膵β細胞を用い, 3例の糖尿病性ケトーシス患者, 1例の糖尿病性昏睡患者の治療を試みた.
血糖値と血糖の変化率にもとづき算出された治療開始時のインスリン注入率は, 24.2~140.6m U/minであった. 血糖値は平均血糖降下率96土8mg/100ml・hrで低下, 低血糖の発症をみることもなく5~8時間後に100~170mg/100mlとなった.その間のインスリン投与量は26~40U/8hrsと少量であった.
遷延性ケトーシスを示した1症例を除き, 血漿3-OHBA値は8時間以内に正常域に低下した. 遷延性ケトーシスを示す場合には, 血糖降下率も低く, インスリン注入プログラムのパラメーターを変換, インスリン注入量を増加する必要があると考えられた.
以上, 人工膵β細胞による糖尿病性ケトーシスや昏睡患者の治療成績は, いわゆるインスリン少量持続注入療法の有用性を確認しえた. 血糖値をmonitoringし, 刻々変化する病態を把握し, インスリン注入プログラムのパラメーターを変換, インスリン注入量を調節しうる人工膵β細胞は, 血糖の最適および適応制御が可能であり, 治療機器として臨床的に非常に有用と考えられた.