糖尿病
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著明な低リン血症を伴った糖尿病性ケトアシドーシスの2例
小泉 順二太田 正之渡辺 彰若杉 隆伸多々見 良三上田 幸生上田 良成亀谷 富夫羽場 利博伊藤 清吾宮本 正治馬渕 宏竹田 亮祐
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1980 年 23 巻 3 号 p. 251-259

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抄録

糖尿病性ケトアシドーシスの治療中に著明な低リン血症を認め, それが昏睡の遷延及びショック状態に何らかの影響を及ぼしたと思われた2症例を経験した. また, 最近, 我々が経験した他の4例の糖尿病性ケトアシドーシス例の血清リンに関しても若干の考察を加え報告する.
症例1.19才男, 糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡で入院, 入院時, 血糖425mg/dl, 尿ケトン体 (2+) pH7.34重炭酸13mEq/lとアシドーシスは軽度であったが深い昏睡を認めた. 血清リンは0.7mg/dlと著明に低下していた. 入院後, 血糖はコントロールされたが意識は回復せず, 第2病日, リン酸イオン9mEq投与により血清リンは1.3mg/dlと上昇し入院後約32時間で意識は回復した. 上肢の筋肉痛, 脱力感を認めた. 第6病日の脳波でhypofUnctionが疑われたが第38病日に正常化した.
症例2. 38才女, 糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡で入院, 入院後ケトアシドーシスは改善し意識回復するも敗血症性ショックと思われる状態出現し第8病日死亡した. 血清リンは入院時の3.3mg/dlより第3病日には0.4mg/dlと著明に低下し, 第6病日に認められたジャクソン型けいれん発作は0.4~0.7mg/dlの持続する低リン血症の影響と考えられた. 剖検では急性腎不全と軽度の脳神経細胞の変性が認められた.
糖尿病性ケトアシドーシスで昏睡の遷延やショックなどを伴う例では頻回に血清リンを測定し, リンの補給を考慮すべきである.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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