糖尿病
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糖尿病患者の尿中低分子量蛋白と腎尿細管機能障害
大滝 幸哉中川 英彦前田 昌子栗林 忠信俵 哲荒木 淑郎
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1980 年 23 巻 6 号 p. 587-596

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抄録
糖尿病患者の尿中蛋白質を, SDS-polyacrylamide gel電気泳動を用いて分析し, 尿中に排出される蛋白質の分子量の差異による分布を調べた. 電気泳動図からは, albuminより低分子量の蛋白質 (LMW-蛋白質) が相当排出されていることが明らかで, また, 主として4本のバンドが明瞭に観察された. これらの蛋白質の分子量はそれぞれ, およそ42,000, 32,000, 21,000, 15,000であった. 対照として用いた尿細管障害群, ネフローゼ症候群, 糸球体腎炎, および正常群の結果と比較すると, 糖尿病の泳動像は尿細管障害群のものによく類似し, 他の対照群とは異なっていた. LMW-蛋白質の全蛋白質に対する割合を電気泳動図から求めると, 糖尿病, 尿細管障害群, ネフローゼ症候群, 糸球体腎炎でそれぞれ, 45.6土9.4%, 66.4土10.3%, 16.4土2.5%, 24.5土10.2%であった. また, 糖尿病で排出されるLMW-蛋白質と, 尿細管障害群のそれとの同一性を調べるために, LMW-蛋白質の分離精製を行った. そのうちで分子量33,000の蛋白質は, 尿細管障害群に見られる蛋白質と電気泳動的に同一であることがわかった.
これらの結果は, 糖尿病では腎尿細管に機能的障害の生じている可能性を示唆するものである.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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