糖尿病性血管病変と血液凝固亢進状態の関連を血管壁凝固活性および組織での血栓の有無から検討した報告は少ない. 著者は, 24匹の雄家兎を用い, N (normal), DM (alloxan diabetic), DM-SE (alloxandiabetic treated with gliclazide), DM-Ins (alloxan diabetic treated with insulin), N-Ins (normaltreated with insulin) の5群を作製し, 1ヵ月飼育後に以下の検索を行った. 処置前, 後における各群の血液凝固線溶能, 大動脈thromboplastic activityの測定, 左頸動脈, 心, 冠動脈, 大動脈, 右腎, 右腎動脈の光顕, 大動脈, 腎の螢光抗体法 (抗IgG, A, M, βIC-globulin, fibinogen, 血小板第4因子 (PF4), 組織トロンボプラスチン血清使用) を行った. DM群でPF4, fibrinogen, F-V, F-VIIIの著増を認め, DM-SE群およびDM-Ins群で是正を認めた. DM-SE群とDM-Ins群に大差なく, DM群の凝固亢進の是正が, SE投与による抗血小板作用によるのか, 血糖改善に伴う二次的変化なのかは不明である. 大動脈thromboplasticactivityはN-Ins>DM-Ins>DM>DM-SE>N群の順に強く認められた. N-Ins群やDM-Ins群での高値は, insulin投与による慢性低血糖や高インスリン血症が血管壁凝固活性を促進したためと考えられた. 形態学的所見では, 光顕, 螢光抗体法いずれにおいても, 初期動脈硬化病変や血栓形成を各群とも認めえず, 血液凝固線溶能の差異による血管病変の相違を証明しえなかった.
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