糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
糖尿病心の超音波検査及びその病理組織像の定量的分析の試み
堀江 浩章伏見 尚子瓦谷 仁志吉川 敏朗西川 光夫
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 24 巻 1 号 p. 11-17

詳細
抄録
糖尿病患者の心機能異常を検討し, 糖尿病性心筋症との関連を明らかにするために, Ultrasonic Cardiography (UCG) による測定, 及び糖尿病を合併した患者の剖検心における計測と組織学的検索を試みた. UCGは東芝ソノレーヤー11A, 凹面探触子 (2.25MHz) を用い, 心室中隔, 後璧の厚さを測定し, 前方駆出率も求めた。剖検による検索は, ホルマリン固定後, 中隔, 前壁の厚さを測定し, それぞれの部位から切り出した標本を, H・E染色, PAS染色, マロリー染色で組織学的に検索した。各標本からモノクローム写真をとりQuantimet720Image Analyzing Computer (ケンブリッヂInst.) にて, 心筋緑維を除く間質部分の全体に対する面積比を測定した。また同じ写真から心筋線維の横径を測定した. 心室中隔の厚さ (IVST) と後璧の厚さ (PWT) の比は, 糖尿病群では対照群に比べ有意に大きく, 糖尿病群内の比較では, 細小血管症の存在する群 (1.10±0.04) は存在しない群 (0.94±0.04) に比べ有意に大きかった. 剖検の結果では, 中隔の厚さと前壁の厚さの比は, 対照群 (1.04±0.05) に対し, 糖尿病群では (1.23±0.07) 有意に大きく, 標本上で測定した心筋線維の直径は, 対照群 (14.5土0.1μm) に対し糖尿病群 (12.9土0.1) で有意に低下していた. 以上より, 糖尿病患者ではUCGによる測定でIVST/PWT比の増大がみられ, 剖検心の測定でも同様の傾向がみられた. また細小血管症を有するものが, 有さないものより有意に増大していることから, 細小血管症との関連が示唆された.
著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top