糖尿病
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携帯型インスリン注入システムを用いたインスリン皮下持続注入法による血糖制御
人工膵β細胞・携帯型インスリン注入システムを用いたインスリン静脈内注入法との比較
新居 貞雄鮴谷 佳和河盛 隆造八木 稔人岩間 令道久保田 稔七里 元亮阿部 裕
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1981 年 24 巻 1 号 p. 27-33

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抄録

携帯型インスリン注入システムによるインスリン皮下注法の有用性と問題点を指摘すべく6名の糖尿病患者に5種類の治療 (人工膵β細胞, 携帯型インスリン注入システムによる静脈内注入法及び皮下注入法, 速効型インスリン皮下注法, 中間型インスリン皮下注法) による24時間の血糖制御を行い, 血糖, 血漿インスリン (IRI), 血漿グルカゴン (IRG) の動態を比較検討した. その結果,
(1) 本システムによる静脈内注入法により, 血糖, IRI, IRG動態を人工膵β細胞による場合に近づけ制御することができた.
(2) 本システムによる皮下注入時のIRI動態は, インスリン注入量を静脈内注入時の1.3~1.5倍量とし食前30分に注入を開始しても, 静脈内注入時と異なった動態を示し, 血糖制御も不十分であった.
(3) 本システムによる皮下注入法は, IRI動態, 血糖制御状態からみて, 中間型インスリン皮下注法に優るが, 速効型インスリン皮下注法との間には明らかな有意差を認めなかった.
以上, 携帯型インスリン注入システムによる皮下注入法は, 現時点では, 速効型インスリン皮下注法に比し, 精神的, 肉体的苦痛の軽減, 深夜にかけての血糖上昇傾向抑制の2点で優るにすぎず, 血糖日内変動制御においては, 有意差を認めなかった. 今後, IRI動態を生理的範囲に近づけるべくインスリン注入プログラム開発の必要性が示唆された. また, 機器の安全性への十分な考慮が必要で, 臨床応用には慎重でなければならないと考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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