糖尿病
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治療困難な糖尿病における持続皮下インスリン注入療法の効果
とくに, 不安定型糖尿病の糖代謝正常化について
豊島 博行難波 光義清水 孝郎花房 俊昭鷲見 誠一野中 共平垂井 清一郎
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1981 年 24 巻 5 号 p. 553-563

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抄録

簡便に操作ができ, 極めて小型軽量の持続皮下インスリン注入 (continuous subcutaneous insulininfusion, 以下CSII) 装置の開発に際し, 著者らは臨床的立場から, その改良に参加した.その結果改良された同装置を用いる短期間のCSII療法により, 外因性インスリンを要する糖尿病患者の糖代謝正常化が可能となるか否かを検討したところ, 従来の, 中間型または速効型インスリン1日1~3回注射時と比較すると, 投与インスリンを減量しえたにもかかわらず, 血糖日内変動には著明な改善がみられた.すなわち, 6例の日内平均血糖値の平均値は, 180±22 (mean±SD) mg/dlより123±28mg/dlに, M値の平均値は73±23より18±9へと, いずれも推計学的に有意な低下を示した.とくに, 血糖調節が極めて困難であるとされる膵全摘糖尿病者, brittle型糖尿病者, 周産期のインスリン依存性糖尿病妊婦においても, 正常者とほぼ変わらない血糖調節が可能であった.血漿遊離脂肪酸の日内変動は, CSII療法により正常化を示す傾向がみられた.血中ケトン体濃度の高値を示す例は, その正常化がみられた.しかし, 血清コレステロール, トリグリセリド, β-リポ蛋白濃度は不変であり, 血中アラニン.ピルビン酸, 乳酸濃度, 赤血球2, 3ジホスホグリセリン酸濃度も有意な変化を示さなかった.インスリン抗体の存在しない例において, 血漿IRI, CPR値の日内変動を検討したところ, CSII療法では, IRI, CPRともにむしろ軽度の低下を示した.
今回著者らの試みたCSII療法は, 従来のインスリン療法で血糖調節の困難な例においても, 正常者に匹敵する良好なコントロールを可能にすることが確認された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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