糖尿病
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Disopyramide (Rythmodan ®) 投与により血糖の低下を見た糖尿病の1例
小泉 順二川崎 英上野 秀明藤田 恭子能登 稔織田 邦夫馬渕 宏
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1981 年 24 巻 8 号 p. 861-866

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抄録

Disopyramideは近年開発されたキニジン様作用を持つ抗不整脈剤である.最近, われわれは本薬剤により血糖が低下し, 耐糖能異常が改善した症例を経験し, その投与中および投与後のインスリン分泌を検討した.
症例は56歳の女性で, インスリン治療を受けていたが, 今回, 右眼硝子体出血のため入院した.入院中, 心室性期外収縮を認めるようになり, Disopyramide 300mg/dayが投与された.本薬剤投与後8日目の早朝空腹時血糖値 (FBSと略) は, レンテインスリン16単位の使用で147mg/dl, で, 14日目にはFBS85mg/dl, 朝食後2時間血糖51mg/dlと血糖は低下した.以後, レンテインスリン6単位でコントロールされ退院した.退院後も, FBSは111mg/dlとコントコールされた.期外収縮も認めないためDisopyramideを中止した.中止後, 血糖は上昇し, レンテインスリン12単位でFBSは195mg/dlとコントロール不良となった.Disopyramide 300mg/day投与中の509 OGTTでは耐糖能の明らかな改善が見られ, CPR反応もほぼ正常範囲であった.本薬剤中止後の509 OGTTは悪化し, CPR反応も低下した.経過観察中に体重や腎機能の変動はなかった.他に血糖低下作用を有する薬剤の投与がなかったことなどより, 本例の耐糖能の変化は, Disopyramide投与によるものと考えられた.また, 本薬剤の血糖低下作用はインスリン分泌と関係があると推察された.Disopyramide使用に際し, 糖代謝に及ぼす影響を十分に考慮する必要があると思われる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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