糖尿病
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末梢神経伝導速度とHbA1c, 2・3-DPGの相関性について
糖尿病性末梢神経障害の発現機序の1考察
山本 厚子日置 長夫
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1982 年 25 巻 10 号 p. 1043-1051

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抄録
糖尿病性末梢神経障害の発生, あるいは進展には種々の因子の関与が考えられる。今回, 微小循環における酸素解離に関与し, 組織anoxiaのbiochemical mediatorとして重要因子とも考えられる2・3-diphcophoglycerate (2・3-DPG) とglycosylated Hbの定量と運動神経伝導速度 (MCV), 知覚神経伝導速度 (SCV) を同時に計測し, それらの相関性につき検討した. すなわち, HbAlc4-6%41例を1群, HbAlc6~8%37例をII群, HbAlc8%以上34例をIII群とし, 計112例につき検討した. その結果,(1) HbAlcと2・3-DPGとの間には, II, III群, 糖尿病全群との間に負の相関を認めた. (2) HbAlcとMCV (腓骨神経) との間には, II, III群, 糖尿病全群との間に負の相関性を示した. (3) 2・3-DPGとMCVとの間では, 糖尿病全群との間にのみ正の相関性を認めた. (4) FBSとMCVとの間には, I-III群の各々に相関性を認めず, 糖尿病全群としてのみ有意の相関性を示した. 以上の結果から, 糖尿病性末梢神経障害の進展機序には, 高血糖そのものよりも, 酸素結合能の高いHbAlcの上昇によるHb-O2解離能の低下, Hb-O2解離の重要因子である2・3-DPGの低下による末梢組織への酸素供給能の減少が重要な因子のひとつであることが示唆された.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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