抄録
自然発症糖尿病KKマウスを, 過血糖の高度な4ヵ月齢から7ヵ月齢の期間, 制限食で飼育し, 自由食群と腎糸球体病変を中心に比較検討した.
(1) 制限食群は自由食群に比較して, 耐糖能 (p<0.01), 体重 (p<0.001), 血中インスリンレベル (p<0.001), 腎重量 (p<0.001), 腎重量/体重比 (p<0.01) の有意な減少を示した.
(2) 制限食群は自由食群に比較して, 糸球体面積 (p<0.001), 糸球体毛細血管基底膜の幅 (p<0.001) の有意な減少を示した.
(3) 螢光抗体直接法により, 自由食群の糸球体にIgA, IgGの沈着が主としてメサンギウム内に, 一部毛細血管壁に沿って高度に認められた.一方制限食群では, これら免疫グロブリンの沈着は著しく減弱し, この傾向はIgGに顕著であった.
(4) 血中β-N-acetylglucosaminidase活性は, 制限食群が自由食群に比較して有意な低下を示した (p<0.05).肝ではβ-N-acetylglucosaminidase活性 (p<0.001), β-galactosidase活性 (p<0.02) ともに制限食群に上昇がみられ, 制限食飼育による肝障害の改善結果との関連性が示唆された.しかし腎では両活性とも制限食群で有意な活性増加はみられなかった.
(5) KKマウスの制限食飼育は, 主に過血糖の改善を介し糸球体病変の進展を抑制することが示唆された.