糖尿病
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わが国における糖尿病妊婦分娩例の実態 (第2報)
大森 安恵嶺井 里美東 桂子秋久 理真横須賀 智子本田 正志平田 幸正
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1982 年 25 巻 5 号 p. 557-563

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抄録
わが国における糖尿病妊婦分娩例の実態を知るため, 私達は1980年12月, アンケートによる第2回目の全国調査を行った.第1回全国調査は, 1971年から1975年までの5年間の分娩例について行い既に報告した. 第2回調査は, 第1回と同じ方法で, 1976年から1980年までの5年間の妊婦について, 糖尿病の発症年齢, 分娩までの罹病期間, 妊娠中の治療, 周産期死亡率, 新生児合併症などについて調査した.
今回調査した5年間の糖尿病妊婦分娩例は645症例, 693分娩, 694児であった.糖尿病妊婦分娩例の頻度は1975年0.15%, 1979年0.17%であった.糖尿病妊婦はWhiteの分類classBがまだ圧倒的に多く, 分娩までの平均罹病期間は, 約4年で年々罹病期間が延長する傾向はまだ認められなかった.しかし, 11年以上の罹病期間をもつ妊婦が有意に増加していた.妊娠中の治療は, インスリン治療が最も多く693例中265例38.2%であった.経口剤治療例は693例中5例0.7%で前回調査より有意に減少していた.周産期死亡は, 694児中50児7.2%で第1回調査の周産期死亡378児中41児10.8%に比較し, 明らかな低下がみられた.
新生児合併症は, 低血糖が最も多く, 20.9%に認められ, 次いで呼吸窮迫症候群の8.9%であった.呼吸窮迫症候群は, 妊娠後期未治療だったものの新生児に最も多くみられた.呼吸窮迫症候群は, 重症奇形とともに新生児の主要な死因になるので, 妊娠中の糖尿病の厳格な治療の必要性が再び強調された.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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