人工膵島開発の所期の目標は, 糖尿病患者の長期にわたる血糖制御とその結果としての細小血管合併症の発症, 進展阻止にあることはいうまでもない.今回, 人工膵島小型化の最大の問題点である超小型ブドウ糖センサーの開発に成功, これを組み込んだ携帯型人工膵島 (18.0×17.6×7.9cm大, 約700g重) を試作, その妥当性を検討した.
1) 開発した微小針型ブドウ糖センサー (過酸化水素電極を応用した酵素電極方式, 先端径0.4~1mm, 2cm長) は
in vitro測定系において, ブドウ糖濃度0~500mg/100m
l間で直線性を認めた.また, noise 1%以下, drift 1%以下/hr, 残余電流6%以下, 温度係数 (37℃ 基準) 5%以下/1℃, 応答時間 (T
90%) 20秒以下の性能をもち, また25mmHg以上の局所酸素濃度で一定した出力を示し, 直線性, 再現性, 安定性において良好であった.
2) 正常犬の経ロブドウ糖負荷時のセンサー応答曲線は, ブドウ糖センサー静脈内, 筋肉内, 皮下組織内留置時いずれの場合においても, 静脈血糖モニター値とよく一致した.しかし, 生体内留置時には4~7日で機能劣下を認め, 長期使用には4日ごとのセンサー・チェックが必要であった.
3) 微小針型ブドウ糖センサーを組み込んだ携帯型人工膵島を膵摘糖尿病犬に携帯させ, 7日間の血糖制御を試みたところ, その間の血糖制御は生理的であった.
以上, 今回の微小針型ブドウ糖センサーはdisposable typeであり, センサーを適宜交換することにより携帯型人工膵島の糖尿病患者への長期応用の可能性を充分に示唆しえた.
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