糖尿病
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25 巻, 5 号
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  • 日置 長夫, 山本 厚子
    1982 年25 巻5 号 p. 545-555
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    耐糖能異常患者の治療指標としてルチン化されている%HbAIcまたは%HbAIがいわゆるglycosylationを正当に反映しているかの点に疑義を持ち, 今回はTrivelliの原法に準拠し分取したHbAI各分画, HbA.分画中の単糖類の存在様式をgas chromatography-masss pectrometry (以下GC-MSと略す) 系によるmass frgmentography (以下MFと略す) の手法を用いて解析し諸種病態の正しい把握のための新しい情報を得ようと試みた.
    1)%HbAIcとHbAI+HbAoにおける単糖類量に対するHbAIcの単糖類量の百分率との間に有意の正相関が存した.2) hexoseの結合様式においてHbAIcとは異った特異性がHbAIa, HbAIbに存した.3) HbAoにおけるhexoseの存在様式は%HbAIとの関連において重要な意義を持つと考えた.4) HbAo, HbAI+HbAoにおける単糖類の量と%HbAIc,%HbAIは相関しなかったが, TBA color valueと%HbAIが相関するというGabbayの報告を支持するにはなお検討されるべき問題がある.従来の%HbA分画の測定よりも構成単糖類の測定の方がよりglycosylationを反映するものと考えるのが妥当であるかどうかについては今後十分検討されるべき課題を含んでいる.
  • 大森 安恵, 嶺井 里美, 東 桂子, 秋久 理真, 横須賀 智子, 本田 正志, 平田 幸正
    1982 年25 巻5 号 p. 557-563
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    わが国における糖尿病妊婦分娩例の実態を知るため, 私達は1980年12月, アンケートによる第2回目の全国調査を行った.第1回全国調査は, 1971年から1975年までの5年間の分娩例について行い既に報告した. 第2回調査は, 第1回と同じ方法で, 1976年から1980年までの5年間の妊婦について, 糖尿病の発症年齢, 分娩までの罹病期間, 妊娠中の治療, 周産期死亡率, 新生児合併症などについて調査した.
    今回調査した5年間の糖尿病妊婦分娩例は645症例, 693分娩, 694児であった.糖尿病妊婦分娩例の頻度は1975年0.15%, 1979年0.17%であった.糖尿病妊婦はWhiteの分類classBがまだ圧倒的に多く, 分娩までの平均罹病期間は, 約4年で年々罹病期間が延長する傾向はまだ認められなかった.しかし, 11年以上の罹病期間をもつ妊婦が有意に増加していた.妊娠中の治療は, インスリン治療が最も多く693例中265例38.2%であった.経口剤治療例は693例中5例0.7%で前回調査より有意に減少していた.周産期死亡は, 694児中50児7.2%で第1回調査の周産期死亡378児中41児10.8%に比較し, 明らかな低下がみられた.
    新生児合併症は, 低血糖が最も多く, 20.9%に認められ, 次いで呼吸窮迫症候群の8.9%であった.呼吸窮迫症候群は, 妊娠後期未治療だったものの新生児に最も多くみられた.呼吸窮迫症候群は, 重症奇形とともに新生児の主要な死因になるので, 妊娠中の糖尿病の厳格な治療の必要性が再び強調された.
  • 笠間 俊男, 大久保 孝史, 内田 迫子, 高山 洋子
    1982 年25 巻5 号 p. 565-571
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    ビーグル犬を用いてインスリン低血糖に対するグルカゴンとコルチゾールの併用効果を検討した.
    インスリン (0.1~0.4U/kg) とグルカゴン (10μg/kg) は皮下投与し, コルチゾール (50mg/kg) は静脈内に投与した.動物から経時的に採血し, 血糖およびc-AMP濃度を測定した結果, インスリン投与後30分にグルカゴンあるいはコルチゾールを投与して得られた血糖の上昇に比して, コルチゾールとグルカゴンの同時投与, およびコルチゾール投与後15, 30および60分にグルカゴンを投与した際の血糖上昇は極めて大きかった.血糖曲線下面積を算出して比較すると, グルカゴンとコルチゾール併用による効果はそれぞれの単独投与による効果の相加ではなく, 相乗的であり, 特にコルチゾールによるグルカゴン作用の増強と考えられた.これは, コルチゾールによるphosphodiesterase活性の抑制に基づく組織内c-AMP濃度の上昇がその一要因であると考えられた.
  • 田中 明, 宮野 龍美, 若林 哲雄, 杉山 博通, 内村 功, 前沢 秀憲
    1982 年25 巻5 号 p. 573-580
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病におけるHDL代謝の特性をHDL亜分画の面より検討した.健常24名, 動脈硬化症所見のない糖尿病58名, 虚血性心疾患 (IHD) 23名について血清HDL2, HDL3コレステロール (HDL2・C, HDL3・C) を測定した.その結果,(1) 糖尿病でT-HDL・C, HDL2・C, HDL3・Cとも健常と有意差を示さなかったが, IHDではこれら3者とも有意に低値であった. (2) 治療法別では, インスリン群男性で経口剤群男性よりHDL3・Cが低値であった以外に差を認めなかった. (3) 合併症例では, 網膜症男性のHDL3・C, 女性のHDL2・C, 神経症男性のHDL3・Cが有意に低値であった. (4) 全対象例でみると, HDL2・CはT-HDL・Cと相関した変動を示したが, HDL3・CはT-HDL・C30mg/dl以下の場合にのみ低下を示した. (5) 健常ではT-HDL・CとHDL3・Cに相関をみなかったが, 糖尿病はTHDL・C低値例が多くないのに, IHDと同様に相関を認めた.なお, 糖尿病中インスリン療法群ではHDL3・CとT-HDL・Cとの相関は認めなかった.以上の成績より, 動脈硬化症所見のない糖尿病では, T-HDL・C, HDL2・C, HDL3・Cの平均値に異常を認めなかったが, HDL3・Cの動態にインスリンと関連した特色のあることが示唆された.
  • 北沢 明人, 名方 潔, 古川 恵三, 高松 順太, 藤田 邦彦, 茂在 敏司, 難波 健, 橋本 忠男, 内海 隆
    1982 年25 巻5 号 p. 581-587
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者60例を対象に, 対光反応の詳細な分析を行い, 糖尿病性末梢神経障害あるいは糖尿病性網膜症などとの関係を明らかにした.
    (1) 糖尿病患者の約78%に刺激前瞳孔面積 (PA), 縮瞳量 (A), 最大縮瞳速度 (VCmax) および加速度 (ACCmax), 最大散瞳速度 (VDmax) の減少が認められ, 潜時 (L) の延長は認められなかった.
    (2) 糖尿病患者の対光反応諸因子の変動は, 健常者におけるピロカルピン点眼時のものと類似し, その自律神経バランスはcholinergicな状態と推定された.
    (3) PA, VCmax, VDmax, の各因子の変動には相関関係が認められ, 瞳孔異常の程度の比較にはPAの測定のみで十分である.
    (4) 瞳孔異常は末梢神経障害と前後して出現し, その進展とともに増強する.
    (5) 瞳孔異常は末梢神経障害のうち, 異常知覚と最も関連が深かった.
    (6) 瞳孔異常は罹病期間とともに増強する.
    (7) 瞳孔異常は糖尿病性網膜症の出現より先行し, その進展とともに増強する.
    以上の結果より, 糖尿病患者のPAの測定は糖尿病性末梢神経障害あるいは糖尿病性網膜症の早期発見, 予後の予測に有用であると考えられた.
  • 七里 元亮, 河盛 隆造, 鮴谷 佳和, 山崎 義光, 野村 誠, 伯井 信美, 阿部 裕
    1982 年25 巻5 号 p. 589-597
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    人工膵島開発の所期の目標は, 糖尿病患者の長期にわたる血糖制御とその結果としての細小血管合併症の発症, 進展阻止にあることはいうまでもない.今回, 人工膵島小型化の最大の問題点である超小型ブドウ糖センサーの開発に成功, これを組み込んだ携帯型人工膵島 (18.0×17.6×7.9cm大, 約700g重) を試作, その妥当性を検討した.
    1) 開発した微小針型ブドウ糖センサー (過酸化水素電極を応用した酵素電極方式, 先端径0.4~1mm, 2cm長) はin vitro測定系において, ブドウ糖濃度0~500mg/100ml間で直線性を認めた.また, noise 1%以下, drift 1%以下/hr, 残余電流6%以下, 温度係数 (37℃ 基準) 5%以下/1℃, 応答時間 (T90%) 20秒以下の性能をもち, また25mmHg以上の局所酸素濃度で一定した出力を示し, 直線性, 再現性, 安定性において良好であった.
    2) 正常犬の経ロブドウ糖負荷時のセンサー応答曲線は, ブドウ糖センサー静脈内, 筋肉内, 皮下組織内留置時いずれの場合においても, 静脈血糖モニター値とよく一致した.しかし, 生体内留置時には4~7日で機能劣下を認め, 長期使用には4日ごとのセンサー・チェックが必要であった.
    3) 微小針型ブドウ糖センサーを組み込んだ携帯型人工膵島を膵摘糖尿病犬に携帯させ, 7日間の血糖制御を試みたところ, その間の血糖制御は生理的であった.
    以上, 今回の微小針型ブドウ糖センサーはdisposable typeであり, センサーを適宜交換することにより携帯型人工膵島の糖尿病患者への長期応用の可能性を充分に示唆しえた.
  • 井上 幸子, 大森 安恵, 小浜 智子, 本田 正志, 福田 雅俊, 平田 幸正
    1982 年25 巻5 号 p. 599-605
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    妊娠による糖尿病性血管障害の悪化はある頻度でみられると認められているが, 非増殖性網膜症が妊娠により増悪するか否かは一致した意見がない.私達は, 初診時Scott I a (右) II (左) の糖尿病性網膜症が妊娠により増悪し, 両眼Scott III bとなり, 光凝固療法の有効だった症例を経験したので報告した.
    症例は38歳事務員, 12年の糖尿病罹病期間をもち, 発症以来インスリンで治療されていた.糖尿病の治療開始3年後 (29歳) に甲状腺機能亢進症を併発し抗甲状腺剤で治療した既往歴がある.昭和53年11月 (38歳) 妊娠継続と妊娠中のコントロールおよび管理を希望して妊娠15週で当院初診し, 地理的条件で通院困難なため, 初診時より分娩終了まで入院した.入院中の血糖コントロールは良好であった.Scott I a IIの単純性網膜症は妊娠22週から25週でScott III bに急速に悪化し, 31週に光凝固術を施行した.37週に帝王切開にて2,310gの健康な女児を得た.分娩後網膜症の悪化は停止し, Scott III aへの改善が見られた.本例は初診から分娩までの全経過を入院ですごし, 厳重な治療管理下にありながら, 網膜症が進行したがその理由は明らかでない.
  • 岩崎 誠, 小林 正, 大角 誠治, 柏木 厚典, 吉川 隆一, 原納 優, 繁田 幸男
    1982 年25 巻5 号 p. 607-613
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    早老症候群の1つであるWerner症候群は, 糖尿病の発症を高頻度に認める.しかし糖尿病の程度は軽度で, 高血糖に伴う臨床症状のみられるものはわずかであるとされている.またブドウ糖負荷試験で高度のインスリン分泌がみられることが多く, インスリン抵抗性があると考えられている.我々は, 稀とされているインスリン欠乏性糖尿病を伴ったWerner症候群の1例について, インスリン感受性試験と赤血球を用いたインスリン結合を行ないインスリン作用の障害部位を検討した.
    症例は33歳の女性で, 約3年の糖尿病歴をもち, 老人様顔貌, 無月経, 脱毛, るいそう, 白内障といったWerner症候群の特徴とされる症状を呈していた.尿糖, 尿ケトン体を強陽性に認め, 509OGTTでは, 血糖は前値573mg/dl, 1時間値615mg/dl, 2時間値732mg/dlと高度の耐糖能異常があり, トルブタマイド負荷試験では, 血糖の低下はほとんどなかった.インスリン感受性試験では高度の感受性の低下を認め, インスリン結合ではレセプター数と親和性の低下を認めたが, インスリン治療による病態の改善に伴い, インスリン結合は上昇した.内分泌機能検査では, GH分泌試験, LH-RH試験で低反応を示した.以上より, 本例のインスリン抵抗性は, レセプター自体よりむしろレセプター以後の障害によるものが疑われた.また視床下部・下垂体系の異常と, るいそう, 無月経の関係がうかがわれた.
  • 羽場 利博, 藤原 隆一, 浜田 明, 木藤 知佳志, 山本 誠, 藤田 博明, 竹下 治生, 山崎 義亀與, 泉 彪之助, 得田 与夫, ...
    1982 年25 巻5 号 p. 615-623
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は50歳女性で空腹時の口唇・舌のシビレ感と放心状態を主訴として来院した.空腹時血糖 (FBS) は30~59mg/dl, 血中インスリン値 (IRI) は7~16μU/mlで, Turnerらの“amended”インスリン・血糖比 {IRI/(FBS-30) ×100} が30~ ∞ と高く, 絶食試験陽性より, インスリノーマを疑ったが, インスリン分泌刺激試験は陰性で, 膵血管造影や逆行性膵管造影も異常所見を認めなかった.
    腹部CTスキャンにて膵尾部背側にやや突出した径1cmの腫瘍が疑われたが, この所見のみでははっきり確診できなかった.
    経皮経肝門脈カテーテル法により門脈および脾静脈各所のIRIを測定したところ, 腹部CTスキャンの腫瘍部位にほぼ一致して脾静脈の途中に58μU/mlと他の部位に比して明らかな上昇を認め, 開腹術にて膵尾部背側に4mm突出した径1cmの良性腺腫と思われるインスリノーマを発見した.
    現在までの本邦における経皮経肝門脈カテーテル法についての症例報告を小括して若干の考察を加え, その有用性を強調するとともに今後CTスキャンも有力な検査法になり得ると考えた.
  • 皆上 宏俊, 中山 秀隆, 青木 伸, 小森 克俊, 萬田 直紀, 黒田 義彦, 牧田 善二, 中川 昌一
    1982 年25 巻5 号 p. 625-631
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    伝染性単球増加症後に発症したインスリン依存性糖尿病の1例を経験し, 若干の考察を加えた.患者は47歳の女性で, 昭和55年8月13日より感冒様症状が現われ, リンパ節腫大, 肝障害所見及び末梢血に異型リンパ球の出現を認めた.昭和55年9月24日夜半より急激に口渇・多尿・嘔気を自覚し, 翌朝高血糖及び尿ケトン体陽性に気づかれ, 糖尿病性ケトーシスの診断でインスリン治療を開始した.その後の各種ウイルス抗体価測定の結果, Epstein-Barrウイルス抗体価のみに有意の変化が認められ, 先行感染は伝染性単球増加症と考えられた.患者は非常に不安定な糖尿病を呈し, 中間型・速効性インスリンによる治療では十分なコントロールは困難と考えられたため, インスリン持続皮下注療法で経過観察中である.50g OGTTにおけるC-peptide反応は認められず, アルギニン負荷に対するグルカゴン反応も低値であった.インスリン低血糖刺激に対するグルカゴン反応も認められず, 本例ではB細胞機能のみでなくA細胞機能の障害も示唆された.本例では甲状腺マイクロゾーム抗体が入院時より陽性であったが, 昭和56年4月頃より軽度のびまん性甲状腺腫を触知するようになった.甲状腺機能は正常範囲であり経過観察中である.患者のHLA型は, A2・A10/B15・B40/Cw3・Cw7/DR4・DRw9であった.またICSAは, 糖尿病発症後2カ月, 6カ月, 9カ月で検索したがすべて陰性であった.
  • 1982 年25 巻5 号 p. 633-653
    発行日: 1982/05/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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