糖尿病
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インスリン持続皮下注入療法により難治性出血性膀胱炎の改善をみた糖尿病の1例
星 晴久佐藤 徳太郎伊藤 正秋斉藤 毅国分 勝井上 美知子斉藤 和子久門 俊勝吉永 馨
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1983 年 26 巻 4 号 p. 503-508

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抄録

神経因性膀胱を伴う糖尿病にみられる尿路感染症は難治性であることが多い.我々は, インスリン持続皮下注入療法 (以下CSII) による血糖の良好なコントロールの後に, 難治性出血性膀胱炎の軽快をみた重症糖尿病例を経験したので報告する.
症例は10年の糖尿病歴を有するインスリン治療中の63歳女性.血糖のコントロールは不良で, 58歳時に視力障害を認め, 光凝固と白内障の手術を受けた.また末梢神経症もみられるようになった.昭和55年11月 (62歳時) に出血性膀胱炎と糖尿病の治療の目的で当科に転科した.約100単位のインスリンを分割皮下注射し, 膀胱洗浄, 出血部位の電気凝固および抗生物質の投与を行ったが, 発熱, 血尿は出没し, 血糖のコントロールも不良であった.そこで転科7か月後にCSIIを開始した.基礎注入量を1単位/時とし, 各食前に4~12単位を追加注入した.その結果, 血糖は良好にコントロールされ, 6週後には発熱, 血尿はほとんど認められず退院した.
退院後は, 家人による血糖測定のもとにCSIIを継続し, 血糖のコントロールは良好で, 発熱, 血尿などの症状はほとんどなく, 末梢神経症も軽快した.入院中, 退院後を通じて, CSIIによる事故は全くなく, 局所の疹痛, 腫脹などもみられなかった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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