糖尿病
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糖尿病妊婦における血糖自己測定の評価
大森 安恵秋久 理真東 桂子佐中 真由実本田 正志嶺井 里美三崎 明実平田 幸正
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1984 年 27 巻 4 号 p. 531-539

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抄録

妊娠時, 糖尿病治療の目標である代謝異常の完全正常化を遂行するため, 糖尿病妊婦に血糖の自己測定を指導し, 妊娠中自己測定を行わなかった群と, 妊娠中のコントロール, 分娩結果を比較し, 血糖自己測定の評価を行った.
妊娠前から糖尿病があり, 妊娠中自己測定を行った妊婦21名 (IDDM10名, NIDDM11名) と, 妊娠中自己測定を行わなかった同数の妊婦21名を対象とした。自己測定群と非施行群の平均分娩時年齢分娩までの罹病期間, 分娩週は完全にマッチさせた.
家庭における血糖の自己測定回数は, 1週間に平均7回であった.自己測定開始後の来院時に測定した血糖は, IDDMにおいて, 空腹時平均98.5mg/dl, 食後血糖114.5mg/dlで, 自己測定非施行群のそれと比較して有意に低値であった.NIDDMでは, 自己測定群と非施行群で血糖値に差はみられなかった.IDDM, NIDDMともHbAIは, 自己測定群で有意に低値であった.macrosomiaは自己測定群と非施行群で有意差はなかったが, 自己測定群で明らかに少なかった.
コントロール困難なIDDM妊婦では, 血糖の自己測定は, normoglycemiaを保つ一上にきわめて有力な手段であるといえる.NIDDMにおいても, 妊娠中インスリン需要量のいちじるしく増加する症例や, 病院から遠路にある症例では, 自己測定の意義は人きい.
2回の妊娠にかかわらず自己測定によって網膜症の改善した1例と, インスリン需要量が100単位に増量したにもかかわらず血糖正常化を保ち得た1症例の報告も附記した.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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