糖尿病
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Monocomponentインスリンの持続的皮下注入療法 (CSII) に続発し, ヒトインスリンが著効を呈したLipoatrophyの1例
穂田 太郎梅田 文夫渡辺 淳井口 登与志小野 弘迫 康博楢崎 健次郎井林 博
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キーワード: ヒトインスリン
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1984 年 27 巻 sppl1 号 p. 125-130

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抄録
要約: 我々は, 初回治療にMonocomponent (MC) インスリンを用いて治療中, 初期にインスリン・アレルギーの出現と血中インスリン抗体の著増に伴い, 高度のLipoatrophy (LA) を発症し, ヒトインスリンの局所注射が著効を呈した1例を経験したので報告する.
症例は55歳女性. ケトージスを伴った糖尿病の発症を契機に, ActrapidインスリンをCSIIとして両側下腹部に1カ月間継続 (総量474U). その後Lente (MC) 20U1回注射 (上腕・大腿) に変更した. 血糖コントロールは比較的良好に維持されたが, インスリン開始2カ月後より注射局所に掻痒感を伴った発赤と膨疹が出現し, 約5カ月後より両側下腹部に境界明瞭な手掌大の陥凹を生じた. この時点で血中インスリン抗体 (B/T%, PEG法) 85%, Ig E軽度増加 (870IU/ml), 補体および免疫複合体は正常. LA発症10カ月後, ヒトMCインスリン (Monotard) 20Uを片側 (右) のLA周辺に皮下注射したところ, 1カ月後同部の皮下脂肪は充満傾向を示し, 4カ月後には一部を残しほぼ正常に回復した. 一方, 非注射部位には皮下脂肪の増加はみられなかった. この間, インスリン抗体緬は依然高値のまま不変であつた. 本例にみられた一連の臨床的特徴は, LAの成因に免疫機構の関与を示唆するものである. MCインスリンによって生じたLAの報告は現在まで極めて少なく, またヒトインスリンの著効例は本例が最初の報告である.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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