糖尿病
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心拍数変動を用いた糖尿病性自律神経障害の定量的評価 (第3報)
交感・副交感神経障害と臨床像
及川 登
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1985 年 28 巻 1 号 p. 13-18

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抄録

先に我々は心拍変動検査で深呼吸時は副交感神経が, 一方起立時は交感神経が優位であることを報告した. この2つの心拍変動を指標として, 40-59歳の糖尿病者95名と健常者38名の心臓交感・副交感神経機能を比較検討した. 心拍数の変動は瞬時心拍数連続記録装置を用い, 心拍変動の指標は1分間6回の深呼吸を行ないその最大変動幅の5つの平均値 (I-E difrerence), 起立時の最大心拍増加数 (ΔHRmax) を用いた. 健常者のI-E diffbrence 14.4拍/分,ΔHRmax 20.5拍/分に比較して糖尿病者は各々9.4, 15.1と有意に減少しており, 糖尿病者の異常出現頻度はI-E difference 37%,ΔHRmax 29%であった.I-E differenceは罹病期間や6ヵ月間の平均空腹時血糖値と負の相関を示すがΔHRmaxはこれらと全く相関がなかった. I-E diffcrehceはインスリン治療群や網膜症, 蛋白尿を有する群で低下が著しく, 一方ΔHRmaxは増殖性網膜症に至った群で著しい低下を示すが, 治療法や蛋白尿の有無では差がなかった.
以上より, 交感・副交感神経機能とも糖尿病者で明らかに低下しており, 網膜症などの合併症と強く関連していた. 心臓副交感神経は早期に障害されるのに対して交感神経は後期まで保持されていた. 40-59歳の糖尿病者の自律神経症状出現のcritical pointはI-E difference約5.0拍/分,ΔHRmax約10拍/分と考えられた

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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