糖尿病
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糖尿病患者血小板のプロスタサイクリン感受性について
織部 安裕川口 憲司鵜沢 春生
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1985 年 28 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

プロスタサイクリン (PG I2) に対する血小板の感受性を糖尿病性合併症を有する患者でADP惹起血小板凝集能を用いて検討した. すなわち, PG I2の血小板凝集能への抑制効果と血小板凝集能を50%抑制するPG I2の濃度 (IC50) を検討した. そしてこれらの指標と他の代謝指標との関連を中心に検討を加えた. 以下にその成績を示す.
(1) 空腹時血糖は糖尿病群が健常群より有意に高値であり (P<0.001), 血清中性脂肪は糖尿病群が健常群より高値の傾向を示した.
(2) 糖尿病患者は全例が網膜症と運動及び知覚神経伝導速度測定によるニューロパチーの存在を示した. また, ほとんどの症例に腎症すなわち腎生検による糸球体病変の存在あるいは持続性蛋白尿を認めた.
(3) ADP (6μM) による最大凝集率は健常群と糖尿病群の間には差はなかったが, PGI2 (0.5ng/ ml) 添加時の最大凝集率は糖尿病群が健常群より高値であった (P<0.001).
(4) IC50は健常群 (0.30ng/ml) に対し, 糖尿病群 (2.15ng/ml) が有意に高値を示した (P< 0.001).
(5) 空腹時血糖とIC50の間には有意の相関があった (r=0.79, P<0.001).
(6) 以上の結果より糖尿病の血小板機能充進にはPGI2に対する血小板の感受性の低下が重要な要素であり, このことが糖尿病性細小血管症の成因あるいは進展に関与しているものと考えられる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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