糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
重症合併症 (網膜症) を有する糖尿病患者の心理的特性について
吹野 治新里 里春石津 汪玉井 一
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 28 巻 8 号 p. 889-894

詳細
抄録

重症合併症 (網膜症) を有する糖尿病患者の心理的特徴について, 軽症例と対比させ検討した. 対象は, Scott IIIb以上の網膜症を有する37例の重症糖尿病群 (重症群) と網膜症を認めない年齢, 罹病期間をほぼマッチさせた25例の軽症糖尿病群 (軽症群) の計62例である. 心理テストに関しては, 性格や適応性を評価する矢田部ギルフォード性格検査 (YG) と不安状態を評価するState-Trait Anxiety Inventory (STAI) を施行した. 家族歴, 体重増加率, 空腹時血糖値, HbA1値, 治療法には, 2群間に有意差が見られなかったが, Ncphropathy, Neuropathyの発生頻度は, 重症群において有意に高率であった. YGテストで不適応タイブを示した症例は, 重症群で13.5%, 軽症群で52%であり, 軽症群に比し重症群が有意に低率であった. STAIにおける不安尺度は, 軽症群に比し重症群が低い傾向を認めた. 糖尿病発症後, 医療施設へかからず放置した期間, および食事療法が不十分であった期間は, 軽症群に比し重症群が長い傾向にあった. 以上の結果より重症群は, 軽症群に比し, 社会的に適応するタイプであり, 不安を感ずることが少なく, 医療や食事療法を放棄し易い傾向がうかがえ, 糖尿病教育にあたっては心身医学的配慮の必要性が示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top