糖尿病の冠動脈硬化促進作用について, その成因を検討した.
冠動脈造影により評価した冠動脈硬化重症度scoreにより, 対象123名を正常N, 軽症L, 中等度M, 重症Hの4群に分類した. 各群の年齢, 肥満度, 血清総コレステロール (TC), 中性脂肪 (TG) 値に差を認めなかった. 各群の糖尿病罹患率は, N群5, L群14, M群30, H群29%で, 冠動脈硬化重症化に従い高率となった. 75gブドウ糖負荷試験を施行. 各群の負荷前, 負荷後30, 60,120分の血糖値および血糖総和値は, N, L, M, H群の順に高値となった. 次に, 男性について, 糖尿病, 境界, 正常群に分類, 重症度scoreを比較した. 糖尿病は正常群より有意に重症度score高値であった. 各群の年齢, 肥満度, 血圧, 喫煙量, TC, TG値に差を認めなかった. 以上から, 糖尿病は冠動脈硬化促進因子であり, その作用は高脂血症, 肥満, 高血圧, 加齢, 喫煙らの因子を介するものでなく, 高血糖に伴う因子によると考えられた.
重症度score各群のブドウ糖負荷前, 負荷後30, 60,120分のIRI値およびIRI総和値は, N, L, M群の順に減少し, H群はM群より逆に高値を示した. また, 糖尿病例を除いた検討ではH群のIRI高値傾向が著明となった. これらの結果は高インスリンー血症の冠動脈硬化促進作用を支持するが, 糖尿病例の冠動脈硬化促進には高インスリン血症とは別の要因が作用するものと推定された.
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