抄録
II型糖尿病 (NIDDMと略) にはインスリン感受性の低下が普遍的に存在し, 高血糖の病態に関与する一要因となっている. 著者らは治療経過によるインスリン感受性の変動について検討し, その機序に若干の考察を加えた.
インスリン感受性はepinephrine, propranolol, insulinおよびglucoseを同時注入し, 恒常血糖レベル (SSPG) を求めるインスリン抑制試験 (IST) により評価した.
健常者における本法の再現性は平均変動率11.5%で比較的良好であった. 非肥満NIDDM患者のSSPGは203±23mg/dl, 肥満を合併する群のそれは282±13mg/dlとより高値を示し, インスリン感受性の低下を認めた. また肥満を有する耐糖能障害者 (IGT) のSSPG値 (平均229mg/dl) は正常対照 (80±21mg/dl) に比較し有意に高値を示した. 膵性糖尿病, ステロイド誘発糖尿病, 肝硬変を伴った糖尿病患者のSSPGはいずれも高値を呈した.
1~3か月間の食事療法のみによりコントロールが改善した症例でのSSPGは治療前後でそれぞれ242±25および223±18mg/dlと, インスリン感受性の改善傾向は乏しかった. しかしSU剤を同期間併用した群ではSSPGは治療前の261±31mg/dlから, 治療後には188±31mg/dlへと有意の (p<0.05) 改善を認めた. 2群とも治療前後で体重の変動はなかった. したがって, 肥満と代謝コントロールは個体のインスリン感受性に影響する各々独立した要因であることが示唆される.