糖尿病
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糖尿病教育入院例での胆石の超音波検査上の頻度とその要因
特に血糖コントロールと胆石の関係について
中西 徹伏見 尚子井上 徹
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1986 年 29 巻 1 号 p. 49-54

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抄録

糖尿病性合併症がほとんどない軽症糖尿病例で食事ないし経口薬で加療している教育入院211例 (平均年齢52.3歳) を対象に全例スクリーニングとして腹部超音波検査を行い胆石の頻度と各種要因について検討し次の結果を得た. (1) 軽症糖尿病での胆石頻度は健常ドック例の約2.6倍の13.7%と高率であり, かつ無症候性胆石が65.5%と高率を示した. (2) 教育入院時にコントロール良好群での胆石頻度は21.4 (20.2)%, 不良群では9.9 (9.4)%と良好群が約2.2 (2.1) 倍胆石頻度が高かつた. また過去1年間の血糖状況を検討した例でも, 胆石例では非胆石例に比してコントロール良好例の比率が約1.8倍高かつた. このことから血糖のコントロール化は胆石形成を促進する可能性もありうることが示唆された. (3) 軽症糖尿病では肥満度, 血清コレステロールと胆石頻度は関係なかつたが, 血清トリグリセライド, HDLとは若干の関係を認めたが有意ではなかつた. (4) 飲酒, 喫煙例での胆石頻度は非飲酒, 非喫煙例に比して低値を示した. 飲酒による低下の理由としては, 飲酒による血糖コントロール不良化が1つの要因となりうる可能性が推測された. 喫煙については, 喫煙による血糖コントロール不良化はなく, 逆に胆石を増加させる因子であるHDLの低下を認めたため, 喫煙による胆石頻度低下の理由は不明であった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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