糖尿病
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耐糖能異常者における術中術後の血糖管理に関する研究 (第2報)
食道癌手術例について
星 晴久佐藤 徳太郎斎藤 和子久門 俊勝北風 芳春渡部 良一郎小林 達大木 厚吉永 馨西平 哲郎河内 三郎
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1986 年 29 巻 10 号 p. 913-920

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抄録

耐糖能障害を有する食道癌患者38例について, 術中術後の血糖の管理法について検討した。術当日は通常のインスリン注射や経口血糖降下剤は中止し, 術中血糖を30~60分ごとに測定し, 200mg/dlをこえた時点でインスリン持続静注 (以下CIVII) を開始した. 術開始時よりブドウ糖補液を行った群 (以下G (+) 群) は全例, 行わなかった群 (以下G (-) 群) は70%が術中CIVIIを必要とした. 原則として術翌日からインスリン持続皮下注 (以下CSII) に移行した.その結果次のことが判明した. (1) 術開始時よりブドウ糖補液を行った場合, 術後早期のインスリン効果はG (-) 群より有意に大きく, 血中の遊離インスリン, 遊離脂肪酸, 乳酸, 尿素窒素などには2群間で有意の差は認められなかったが, G (-) 群で術中に遊離脂肪酸および乳酸が著しく上昇していた.食道癌のように長時間を要する手術例では, 術当初からブドウ糖補液を行い代謝の異常を少なくすることが有利である. (2) 術中のCIVIIにひき続いて, 術後段階的にカロリーを増す高力βリー補液に際してのインスリン投与法として, CSIIは有効で安全性も高かった. (3) 術後CSIIへ移行した例では, 術後3日目頃からブドウ糖注入量は約370g/日であり, CSIIにより2U/h以下のインスリンで良好な血糖コントロールが得られた. しかし, 耐糖能障害が軽度な症例でも, 0.5~1U/h程度のインスリン注入を必要とした.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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