糖尿病
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糖尿病性腎症の赤血球酸素解離能と血液透析前後での検討
古守 知典河原 玲子雨宮 禎子吉野 正代平田 幸正
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1986 年 29 巻 2 号 p. 105-112

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抄録

赤血球酸素解離能 (P50) を糖尿病性腎症とその透析例で検討した. 対象は腎症を有しない糖尿病43例, 透析未施行の糖尿病性腎症46例および腎症で血液透析を施行した20例である.血液の採取は非透析例では早朝空腹時に, 透析例では透析直前および直後に行った.
1) 未透析糖尿病性腎症46例のP50 in vivo pHは26.0±2.3mmHgで腎症を有しない糖尿病より有意に高かった (p<0.01).
2) 透析例を除く糖尿病の2群計89例において, P50 in vivo pHは血液pHおよび血色素濃度 (Hb) とおのおの負の相関を示した (p<0.001, p<0.005).また2, 3-DPGはHbと負の相関を, P50 pH7.4は2, 3-DPGと正の相関を示した (おのおのp<0.001).
3) 血液透析20例では透析後P50 in vivo pH, 2, 3-DPG, 無機燐 (Pi) はいずれも有意に低下し, 血液pHおよびHbは有意に増加した.また透析前後におけるP50 in vivo pHは血液pHと, 2, 3-DPGはHbと負の相関を示した (おのおのp<0.001).P50 in vivo pHとPiとは正相関を有した (p<0.005).
4) 透析後の赤血球酸素放出能は20例中18例で低下し, その低下率は0.5~37.3%であった.
以上より未透析糖尿病性腎症のP50 in vivo pHは腎症を有しない糖尿病に比べて高値で, これは腎性アシドーシスに伴うBohr効果と腎性貧血による2, 3-DPGの代償性増加機転によると考えられた.また血液透析例での透析後のP50 in vivo pHの低下は, 血液pHの改善と高燐血症の是正および除水効果による2, 3-DPGの低ドによると考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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