糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
CSIIとElemental Diet療法により頑固な下痢症と排尿障害が奏効した糖尿病の1例
清水 弘行高橋 正樹冨沢 貴下村 洋之助小林 功小林 節雄
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 29 巻 3 号 p. 273-278

詳細
抄録

難治性糖尿病性下痢症に膀胱障害を合併した1例を経験し, これに対してelemental diet (ED) とcontinuous subcutaneous insulin infusion (CSII) を併用することにより, 諸症状の消失に成功した. 症例は41歳, 女性. 高血糖, 膀胱障害にて入院. 両側性白内障, 腎症, 神経症を合併. 入院経過中に, 重篤な下痢が出現し諸検査成績から糖尿病性下痢症と診断した. しかし, 体重は29kgとるいそう著しく, 低血糖のためインスリンも投与できず, 既存の治療法のみでは全身状態の改善をはかることが困難であると判断されたため, ED+CSII併用療法が考案された. 本治療法開始後から下痢は激減するとともに全身状態も良好になり, 体重は5ヵ月間に約12kgも増加し, 脂肪便も消失し, 日常生活へ復帰できた. また, 本症例に合併していた膀胱障害も口常生活に支障のないまでに改善した.
本例のようなやせ型で全身状態の極度に不良な糖尿病患者の下痢症に対して, EDを用いて腸管の安静を保ちながら全身状態を改善させ, CSIIにより血糖値を良好に保持することが, 本症に対して有用な治療法であるものと考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top