糖尿病
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ラット糸球体メサンギウム細胞におけるポリオール経路
梅村 喜三郎
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1987 年 30 巻 9 号 p. 837-843

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抄録

糸球体メサンギウムは糖尿病性腎症における主要な病変の場であり, かつ, 糖尿病ラットでメサンギウム細胞 (M細胞) の機能異常の生じていることが報告されている。この異常の成因を解明する目的で, ラットよりM細胞を培養分離しポリオール代謝の有無およびその特性を検討した.
培養M細胞はその形態学的および生化学的特質により同定した. 本細胞にはポリオール経路の酵素活性, aldosc reductase (AR) およびsorbitol dchydrogenaseが存在し, かつ, ARは他組織由来のものと同様なkineticsを示した.本細胞をglucoseまたはgalactose含有液で孵置したところ, 容量依存的にポリオール蓄積が生じ, また, この蓄積はAR阻害剤により有意に抑制された.
以上より, 糸球体M細胞でのポリオール経路の存在が確認され, 高血糖状態では, M細胞内にポリオール蓄積が生じ, M細胞機能異常が惹起されるものと考えられ, これが糖尿病性腎症進展に関与している可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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