抄録
肥満, 高脂血症および高血圧を合併しない労作性狭心症患者を糖負荷試験で正常型 (N群, 21例), 境界型 (B群, 8例) および糖尿病型 (D群, 16例) に分類し, それぞれの冠動脈硬化病変と心機能を比較検討した.冠動脈硬化病変は, B群およびD群で, N群に比べ明らかに広範囲に認められた.心機能は安静時, 3群間に差はなかった.しかし, 運動負荷後, 左室拡張末期圧はN群に比べ, BおよびD群で著明に上昇し, 1回心拍出係数はN群で上昇したが, B群では不変, D群では逆に低下した.冠動脈攣縮誘発剤投与後でも, BおよびD群で左室拡張末期圧が著明に上昇し, 1回心拍出係数は低下し, それらは硝酸剤投与後, N群と差はみられなくなった.以上より, 耐糖能異常が境界域の労作性狭心症患者でも, わずかな負荷で心機能低下をきたし, これは, 広範囲に存在する冠動脈病変に起因すると推定され, 境界領域に属する症例の教育・管理が必要と考えられた.