糖尿病
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31 巻, 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 空腹時血中ケトン体値との関連について
    大星 隆司, 飯沼 情司, 西村 進, 南條 輝志男, 猪尾 和弘, 宮村 敬
    1988 年 31 巻 11 号 p. 835-842
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    増殖性網膜症, 腎機能障害, 心拍変動低下のないインスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者16例に運動 (1 watt/kg標準体重, 20分) を負荷し, 安静時糖尿病状態と運動時代謝, 内分泌, 交感神経反応との関連性を検討した.
    NIDDM患者全体で, 安静時 (“0分”) 血中ケトン体 (3-OHBA) 値と運動時尿カテコラミン反応 (ΔNA, ΔAdr) の間に正の相関がみられた.3-OHBAの0分値が高値の患者群 ((H) 群: n=8), 正常値の患者群 ((L) 群: n=8), 健常者群 ((N) 群: n=5) を比較すると,(H),(L) 両群とも運動後血糖 (PG) は低下し,(H) 群では運動終了直後 (“20分”) で3-OHBAが著明に低下した.20分で (L) 群ではIRIが低下し,(H),(L) 両群ともHGHが上昇した. (H) 群でカテコラミン反応は増大していた. (N) 群ではいずれも変動しなかった.
    安静空腹時に高ケトン血症を呈するNIDDM患者では中等度の運動により, 代謝状態の悪化は生じないが, 交感神経・副腎髄質系が過敏に反応することを示した.
  • 松浦 隆
    1988 年 31 巻 11 号 p. 843-850
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肥満, 高脂血症および高血圧を合併しない労作性狭心症患者を糖負荷試験で正常型 (N群, 21例), 境界型 (B群, 8例) および糖尿病型 (D群, 16例) に分類し, それぞれの冠動脈硬化病変と心機能を比較検討した.冠動脈硬化病変は, B群およびD群で, N群に比べ明らかに広範囲に認められた.心機能は安静時, 3群間に差はなかった.しかし, 運動負荷後, 左室拡張末期圧はN群に比べ, BおよびD群で著明に上昇し, 1回心拍出係数はN群で上昇したが, B群では不変, D群では逆に低下した.冠動脈攣縮誘発剤投与後でも, BおよびD群で左室拡張末期圧が著明に上昇し, 1回心拍出係数は低下し, それらは硝酸剤投与後, N群と差はみられなくなった.以上より, 耐糖能異常が境界域の労作性狭心症患者でも, わずかな負荷で心機能低下をきたし, これは, 広範囲に存在する冠動脈病変に起因すると推定され, 境界領域に属する症例の教育・管理が必要と考えられた.
  • 平山 純二, 南條 輝志男, 三家 登喜夫, 森田 一, 田畑 宏道, 西 理宏, 大萩 晋也, 里神 永一, 西村 進, 近藤 溪, 宮村 ...
    1988 年 31 巻 11 号 p. 851-856
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    カルシウム拮抗剤である塩酸ニカルジピン (N) が末稍組織でのインスリン作用に如何なる影響を及ぼすかを調べるため, 犬にeuglycemic glucose clamp test (EGCT) を施行し, N投与によるglucose disposal rate (DR) の変化を観察した.予備実験として行ったN単独静脈内注入において, Nはインスリン, グルカゴン分泌に有意な変化を与えなかった.つぎにEGCTを行い, 実験開始60分後より60分間かけてN1mgを注入した.N注入前のDRは14.5±0.31mg/kg/minであるのに対し, N注入中は17.5±0.73mg/kg/minと有意に上昇し, N注入中止により13.5±0.58mg/kg/minと有意に低下した.一方, 心拍数もN注入により増加したが, N注入中止後も高値のままであった.これらの事実はNが糖利用能を亢進させたことを示しており, Nが末稍組織でのインスリン作用を直接増加させる可能性が示唆された.
  • 多変量解析を用いた検討
    朝山 光太郎, 雨宮 伸, 土橋 一重, 林辺 英正, 加藤 精彦
    1988 年 31 巻 11 号 p. 857-862
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    若年糖尿病患者21例と同年齢対照児9例の赤血球, 多核球, リンパ球, 単球中のsuperoxide dismutase (CuZnSODとMnSOD) をradioimmunoassay法で測定し, 赤血球glutathione peroxidse (GPX), catalase (CAT), 血漿中過酸化脂質 (TBARS), HbA1c等他の代謝の指標との関連性を検討した.糖尿病児では対照群に比べて単球のCuZnSOD以外のすべてのSODが高値であった.GPX, CAT, TBARSは両群間で差を認めなかった.赤血球CuZnSODを目的変数とした重回帰分析でGPX, TBARS, HbA1c, CATを説明変数とする有意な回帰式が得られ, 重相関係数R=0.816 (p<0.005), 偏相関係数は各々GPX (-0.610), TBARS (-0.606), HbA1c (-0.527), CAT (-0.394) であった.血糖コントロールがインスリン治療により良好化すると関連してSODは誘導される傾向にあり, 脂質過酸化が抑制されていると考えられ, 組織障害性活性酸素に対する生体防御機構としてのSODの血球レベルの臨床的意義が示唆された.
  • 時末 芳子, 吉田 宗儀
    1988 年 31 巻 11 号 p. 863-868
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    asparaginase (以下L-aspと略す) の副作用の1つに催糖尿病作用が指摘されている.急性白血病患者にL-asp投与後, 糖尿病を発症した臨床症例報告は今迄に我国で4例あり, そのうちDown症候群合併症例は1例のみである.我々も最近同様の症例を経験したので報告する.
    症例は19歳男子, 生後1ヵ月の時Down症候群と診断され, さらに13歳の時甲状腺機能低下症を指摘されて加療中であった.昭和61年6月13日急性リンパ性白血病の診断にて入院した.
    L-asp経静脈注射投与後に意識障害をきたし, 空腹時血糖値1,100mg/dlを示したが尿ケトン体は (-) であった.直ちに高浸透圧非ケトン性糖尿病昏睡の診断のもとにインスリン治療と補液を開始した.約800mlの補液後に測定した血漿浸透圧は329 mosm/Lであった.インスリンレセプターについては赤血球との125I標識インスリン結合率は正常範囲にあり, これまでの報告例とは異なっていた.なおインスリン療法はL-asp中止後18日日の11月6日に血糖の改善を得て中止した.
  • 池田 昭夫, 生山 祥一郎, 藤井 貞人, 瀬戸口 洋一, 尾崎 岩太, 高柳 和弘, 山本 匡介, 苅家 利承, 堺 隆弘
    1988 年 31 巻 11 号 p. 869-874
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性.鉄過剰摂取や輸血の既往なし.55歳時に肝硬変.59歳時に糖尿病を指摘され, 食事療法および経口血糖降下剤を開始したが血糖コントロールは増悪し, 60歳でヒトインスリンを開始した.開始2週間後から注射部位に著明な発赤が出現し, 高血糖も改善しないため当科に入院した.入院時125I-インスリン結合率95%, 皮内反応はウシ, ブタ, ヒトィンスリンのいずれに対しても強陽性を示した.血糖コントロールはヒトインスリン62単位/日で改善したが, アレルギーはむしろ増悪したため, デキサメサゾン0.06mg/日を併用局注し徐々に軽快した.肝組織鉄量が963μg/100mg・乾燥重量と著明高値で, 同胞にも同疾患が存在したことから特発性ヘモクロマトーシスと診断した.経過中潟血, デスフェリオキサミン筋注によりインスリン必要量は44単位/日まで減少した.
  • Euglycemic Glucose Clampを用いた検討
    関川 暁, 富永 真琴, 篠原 克信, 松本 光生, 佐々木 英夫
    1988 年 31 巻 11 号 p. 875-879
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    アクロメガリーの術前, 術後にグルコース・クランプ法を用いて末稍のインスリン抵抗性を確認した症例を経験した.
    症例は55歳男性, 昭和57年に糖尿病と診断され, 昭和61年にアクロメガリーと診断された.術前の糖尿病コントロールには1日約150単位のインスリンが必要であった.グルコース・クランプ法をDe Fronzoの原法に準じて手術前, 手術2月後, および6月後に施行した.インスリン感受性を示すM値 (正常人8.4±0.4mg/kg/min. n=7, Mean±S.E.) は各々2.4mg/kg/min, 5.3mg/kg/min, 8.5mg/kg/minであった.
    手術2月後のM値は正常人に比し, 約40%低値を示していたが, この原因は長期にわたった高インスリン血症もしくは高血糖によるインスリン抵抗性が遷延していたと考えられた.
    手術6月後のM値は正常人と同程度であり, 成長ホルモン過剰により2次的に引き起こされたインスリン抵抗性は, 成長ホルモンの正常化により回復するものと考えられた.
  • 岡部 正, 鄭 一, 岩本 耕太郎, 大内 敏宏, 梅田 雅宏
    1988 年 31 巻 11 号 p. 881-884
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    We have used 31P nuclear magnetic resonance spectroscopy to study noninvasively the metabolic state of skeletal muscle in vivo in diabetic patients under poor and good control. The concentrations of phosphocreatine (PCr), inorganic phosphate (Pi) and ATP in hamstring muscles were measured during rest, aerobic exercise and recovery from exercise. Under poor control, diabetic patients (with both IDDM and NIDDM) show evidence of a reduced muscle energy state with the following abnormalities compared with a normal subject. First, PCr concentrations are lower than normal and continue to decline during exercise. Second, Pi concentrations are higher than normal during exercise. Third, PCr resynthesis in post exercise recovery is abnormally prolonged. Under good control, these abnormalities are improved to almost near normal.
    These findings demonstrate the impaired energy metabolism which is due to inhibited glycolysis and/or mitochondrial oxidative activity in skeletal muscles of diabetic patients under poor control. 31P nuclear magnetic resonance spectroscopy may have potential clinical application in defining the biochemical basis of energy metabolism in diabetic patients.
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