抄録
小児IDDM88例 (急性発症例55例, 緩徐発症例33例) とNIDDM52例において, 診断時から10年間経時的に抗ラ島抗体 (ICA) を測定して以下の結果を得た. IDDMの診断時のICA陽性率は67%であり, NIDDMの9%に比べて有意に高かった (P<0.01). 一方, 同じIDDMでも急性発症例の診断時のICA陽性率は78%であり, 緩徐発症例の50%に比べて有意に高かった (P<0.05). しかし罹患期間3年以上では逆に緩徐発症例の方がICA陽性率は高い傾向にあり, したがって経時的なICA陽性率の低下は緩徐発症例の方が緩やかなパターンを示した. また長期間ICAが陽性を示す例では, 抗甲状腺抗体も持続陽性を示し, 急性発症例に比べ緩徐発症例の方が膵B細胞機能も長期間保たれた. 以上の結果から, 同じIDDMでも緩徐発症例では自己免疫に基づく膵B細胞破壊の進行が緩やかであり, このため臨床経過が緩徐に進行するものと考えられた.