1993 年 36 巻 9 号 p. 693-700
糖尿病性神経障害の治療薬として注目されているaldose reductase inhibitorのひとっSNK-860 (SNK) の有効性をストレプトゾトシン糖尿病ラット (STZ-DM) を用いて電気生理学的および生化学的に検討した. 1) STZ-DMで低下した運動神経伝導速度は, SNKおよびインスリンにより有意に改善した. 2) STZ-DMでは, 心電図R-R間隔の変動係数の低下がみられ, その低下はSNKによりインスリンと同様に有意な改善を示した. 3) STZ-DMの坐骨神経内ソルビトールおよびフルクトースの蓄積とミオイノシトール含量の低下は, SNKの投与によりほぼ正常化した. 4) STZDMの坐骨神経Na+/K+-ATPase活性の低下は, SNK投与によってインスリン同様に有意に改善した. 5) STZ-DMで低下した血漿カテコラミン濃度は, SNK投与により有意に改善した. 得られた成績より, 糖尿病性末梢および自律神経障害の発症にポリオール代謝の活性亢進が関与し, その改善にSNKが有効であることが示唆された.