糖尿病
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食後の反応性低血糖を呈したインスリノーマの1例
香取 登久江橋本 佳明高橋 宗春寺谷 宏子塚本 和久木下 誠渡辺 毅加藤 泰一寺本 民生岡 輝明黒川 清
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1994 年 37 巻 11 号 p. 839-844

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抄録
症例は56歳の男性で食後の低血糖症状が10年間にわたり進行し, 精査目的で当科に入院した. 低血糖症状はなかったが第6病日の早朝空腹時血糖が34mg/dl. その際の血中インスリン値 (IRI) が80μU/mlでインスリノーマが強く疑われた. 血糖日内変動では朝食2時間後血糖118mg/dl. IRI 307μU/mlと食後のインスリン過剰分泌反応を示した. 経口, 経静脈ぶどう糖負荷, グルカゴン負荷試験によるIRIのピークはそれぞれ1040μU/ml, >9999μU/ml. 2768μU/mlと著明なインスリン過剰分泌反応を認め, 後二者では血糖が30mg/dlまで低下した. 空腹時の運動負荷ではIRIは31μU/mlから60分後6μU/mlまで抑制され, 血糖は48mg/dlから82mg/dlまで上昇した. 摘出された膵頭部の腫瘍は径2cmの組織学的に良性のインスリン産性ラ氏島腫瘍であった. ぶどう糖刺激に対してインスリン過剰分泌反応を示し, そのため食後の反応性低血糖症状を呈した珍しいインスリノーマの1例を報告した.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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