1994 年 37 巻 6 号 p. 425-430
症例は15年以上のインスリン非依存型糖尿病歴を有する69歳の女性である.腹部膨満感と便秘を主訴として平成4年2月に入院した.主訴は平成元年10月に急性心筋梗塞罹患時に行った心カテーテル検査後に出現し, その後徐々に増悪した.腹部単純X線像や腹部CTなどにおいて小腸壁に気体が貯留し, 多発性のポリープ様病変が認められたため, 腸管嚢腫様気腫症 (Pneumatosis cystoides intestinalis, PCI) と診断された.症例は40~50%の高濃度酸素を6日間吸入した結果, 症状が改善し, また嚢腫は殆ど消失した.退院後15カ月経過した後も症状は再発していない.PCIは糖尿病性神経障害による胃腸障害に症状が似ていることから, 鑑別すべき疾患の1つとして重要であると考え, ここに報告した.