抄録
糖尿病では動脈硬化性疾患の危険因子の一つとしてLp (a) が挙げられている.しかし, 糖尿病でLP (a) が上昇するか否かについては疑問がある.そこで高脂血症未治療のインスリン非依存性糖尿病患者83例における血清Lp (a) 濃度を測定し, 危険因子としての意義をApoB/ApoA1比やatherogenic index (A.I.) と比較検討した.合併症のない糖尿病患者22名のLp (a) は14.8±14.9 (±SD)) mg/dlで健常者の文献値と不変であった.Lp (a) と空腹時血糖やHbA1cとの関係は認められなかった.網膜症, 蛋白尿, 虚血性心疾患合併例のLp (a) は合併症のない糖尿病より有意に高値を示したが, 重回帰分析では蛋白尿のみが重要であった.Lp (a) は他の脂質諸量とは独立しており, ApoB/ApoA1やA.I.と比較すると大血管合併症例で有意に異常値検出率が高いことから, 糖尿病の大血管合併症に対してもよりよい指標と考えられた.以上より, Lp (a) は糖尿病自体では高値とならないが, 蛋白尿と強く関係し, ApoB/ApoA1やA.I.よりも優れた糖尿病性大血管合併症の危険因子と考えられた.