1995 年 38 巻 5 号 p. 347-352
糖尿病性腎不全に対する腎移植の意義を明らかにすることを目的とし, 当施設で腎移植を行った糖尿病患者21名 (移植時年齢37.9±10.7歳) の予後成績を, 導入時年齢の分布を一致させた糖尿病透析患者247名 (導入時年齢49.8±9.0歳), および移植時年齢の分布を一致させた非糖尿病腎移植患者615名 (移植時年齢35.9±7.5歳) と比較した.糖尿病腎移植群における透析導入後の10年生存率は78.4%であり, 糖尿病透析群の37.7%に比べ明らかに高かった.両腎移植群の移植後の5年生存率は糖尿病群90.5%, 非糖尿病群89.2%, 5年生着率は糖尿病群83.5%, 非糖尿病群74.8%であり, 両群に差を認めなかった.以上の結果より, 糖尿病性腎不全に対する腎移植は透析療法に比べ予後改善の点で優れており, 非糖尿病患者と同等の予後成績が期待されることが明らかとなった.糖尿病透析患者の予後およびquality of lifeを考慮すると, 今後わが国においても腎移植の推進が急務といえる.