抄録
わが国における糖尿病患者の長期間にわたる自然史を明らかにする目的で, 当センターの登録糖尿病患者 (NIDDM) 1, 939名について平均15年間の経過観察を行った. 1993年末現在生存1,000名 (51.6%), 死亡880名 (45.4%) で, 生死不明59名 (3.0%) であった. 1,000人年対死亡率は1960-1984年の28.84から1985-1993年の35.74へ上昇した. しかし, O/E比 (観察死亡数/予測死亡数) は1.77から1.52へ低下し, 初診時年齢65歳以上を除くと生命予後は改善傾向がみられた. 死因別には初診時年齢65歳未満のものはこの間全死因, 悪性新生物, 脳心腎血管疾患のO/E比の低下をみたが, 虚血性心疾患は変わらなかった. 65歳以上では逆に全死因, 悪性新生物, 脳心腎血管疾患, とくに虚血性心疾患, 脳血管疾患のO/E比が増加した. また, 腎疾患は全般的にかなりの減少がみられた. 以上の死因の推移から今後の糖尿病患者の死因構造の変化が示唆された