NIDDMの顕性腎症期において, 血圧以外の進展因子と腎機能低下との関係を明らかにする目的で以下の研究を行った. 調査開始時70歳以下で持続性蛋白尿を有し, 血清クレアチニン (Cr) 正常, 血清アルブミン (Alb) 3.0g/d
l以上, を満たす38例を対象とした. 糖尿病以外の腎炎・尿路感染症などが疑われるものは除外し, 過去3年間のHbA
1, 血清総コレステロール (T-CHO), Albの平均値を求めた. 腎機能の指標には1/Crを用い, その3年間の変化量 (△1/Cr) の平均値で対象をさらに2群に分けて検討した. その結果, 収縮期・拡張期血圧は2群間に有意差はなく, 同一群内でも有意な変動はなかった. △1/Crが平均値未満の腎機能悪化群において, △1/CrとHbA
1, T-CHO, Albの間に有意な相関 (それぞれr=-0.49, p<0.05; r=-0.52, p<0.05; r=0.77, p<0.01) を認めた. この群で行った主成分分析では, 第1主成分はHbA
1とAlbが, 第2主成分はT-CHOが主であった. 以上より, 顕性糖尿病腎症の病期にあっても, HbA
1とAlb, 次いでT-CHOが腎症の進展に関与する可能性が示唆された.
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