糖尿病
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糖尿病性腎症により血液透析に至ったKlinefelter症候群の1例
作家 有実子佐伯 明子馬場園 哲也高橋 千恵子岩本 安彦大森 安恵
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1996 年 39 巻 8 号 p. 643-648

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抄録

内分泌疾患や遺伝性疾患などに伴ういわゆる二次性糖尿病においても糖尿病に特有の合併症を引き起こすが, 血液透析にいたるような腎不全に至ったKlinefelter症候群の報告は少ない. 我々は, 糖尿病性腎症により血液透析に至ってからKlinefelter症候群と診断された1例を経験した. 症例は55歳思春期より外性器発育不全を自覚していたが, これまで精査せず放置していた. 昭和49年 (35歳), 糖尿病と診断されたが, その後の血糖コントロールは不良で, 平成4年 (53歳), 高窒素血症が認められた. 平成6年 (55歳), 虚血性視神経炎のため当院眼科で入院加療中, 腎不全が進行し血液透析を導入, 当科に転科した. 身長165.3cm, 指極長167cm, 陰茎未発育, 睾丸小指頭大. 血糖コントロールはHbA1c 9.2%と不良で, 正常血糖クランプ法によるブドウ糖注入率は2.66mg/kg/minとインスリン抵抗性を示した. 血清テストステロンは低値で, LHとFSHの基礎値は高かったがLHRH負荷試験ではLH, FSHともに低反応であった. 染色体分析では47XXYでありKlinefelter症候群と診断した. 本症候群に合併する糖尿病においても, コントロールが不良の場合には慢性合併症の進展に十分留意すべきことを示唆する症例と思われた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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