抄録
NIDDM患者34例 (男性19例, 女性15例) について10年間の間隔をおいて2度の歯科検診を行った. 10年間の平均HbA1cが8%未満のもの (グループA; 14例) と8%以上のもの (グループB; 20例) とに分け, 歯と歯周組織状態の経年的変化について検討した.(1) 糖尿病の罹病年数は, グループAよりグループBの方が有意に長かった.(2) 齲蝕歯数 (DT) および喪失歯数 (MT) は, 両検診時にグループAよりグループBの方が多く, MTには有意差があった.処置歯数 (FT) にはグループ間に差がなかった. 10年間の変化では, MTが両グループとも有意に増加し, 増加歯数の平均はグループA1.6本, グループB3.9本であった.(3) 歯肉炎指数 (GII) と歯槽骨吸収指数 (ABLI) は, 両検診時にグループAよりグループBの方に大きい傾向がみられた. 歯周ポケットの深さ (PD) にはグループ間に差がなかった.10年間の変化では, GIIは両グループとも同程度に軽度減少し, ABLIとPDは両グループとも有意に増加した. 以上の結果と両グループの症例検討の結果とから, 歯の状態は血糖コントロールの良否と罹病年数とに深い関係にあることが示唆され, 良好な歯の状態を維持するためには, 糖尿病の適切なコントロールとNIDDM発症時からの定期的な歯科検診が必要であると考えられる.