糖尿病
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インスリン依存型糖尿病患者における長期間のインスリン持続皮下注入療法の臨床効果と問題点
川島 保子小林 哲郎中西 幸二早川 明子大久保 実村勢 敏郎
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1999 年 42 巻 2 号 p. 149-156

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抄録

インスリン持続皮下注入 (continuous suboutaneous insulin infusion: CSII) 療法はインスリン依存型糖尿病 (lDDM) 例の血糖値の安定化に有効な手段であることが知られている. われわれは20例のlDDM患者 (年齢;31±10歳, 平均±SD, 性 (男/女);11/9, DDMの罹病期間;5.7±5.1年) においてCSll療法を7.0±5-1 (1.5~15) 年間施行し, この治療法の有効性, 特に糖尿病性網膜症の発症進展に対する予防効果, ならびに問題点につきretrospectiveに検討した. GSll治療によりHbA1cおよび空腹時血糖値 (FBG) は前値に比べ有意に低下し, それぞれの平均値は8.2±1.0%および133±24mg/dlであった. 平均BMIはCSll開始直後より上昇したが, 22.2kg/m2以下であった. 低血糖の頻度はCSll前に比べ3~5倍まで有意に増加したが, 入院を要する重症なものは認められなかった. 糖尿病性ケトアシドーシスは2例で1回すつ (後に単純性網膜症, さらに4年後に前増殖性網膜症まで進行した. CSll治療開始時に単純性網膜症を有した4例中1例でCSII始0.3年後に前増殖性網膜症までの進行がみられた. また単純性網膜症を有した他の1例ではCSll開始8年後にこの消失がみられた. CSll療法以外の治療 (non-CSll) を受けているIDDM例 (n=128) での網膜症の発症進展の頻度とCSII治療例での成績を生命表分析により比較したところ, CSll療法例の方が単純性網膜症, 増殖性網膜症の発症頻度が有意に低かった. CSII療法は長期間安定した血糖コントロールを得る有効で安全な手段であり, 細小血管障害, なかでも糖尿病性網膜症の発症進展の予防効果があると考えられた. 2例10%) にみられたCSll治療開始1年以内の網膜症の悪化, さらには全例にみられた体重増加, 低血糖の頻度の増加はCSll治療の注意点と考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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