糖尿病
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アンギオテンシン変換酵素阻害剤による糖尿病性硬化性腎病変の阻止
インスリン非依存性糖尿病モデルラットOLETFの腎病変の観察
森野 正明吉田 孝子佐々木 望
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2000 年 43 巻 2 号 p. 107-112

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抄録
糖尿病性腎症の硬化性病変に対するアンギオテンシン変換酵素阻害剤の効果を検討するために, ヒト肥満型インスリン非依存性糖尿病モデルであるOLETFラットの糸球体病変を観察し, ACE阻害剤であるtemocapril (TP) の長期間投与が糸球体硬化病変に及ぼす影響を検討した. OLETFラットは2群に分けた, 対照群 (n=6) は水道水のみ, TP投与群 (n=6) はTP15mg/Lを溶解した飲用水を, 生後26週齢より投与開始し, 26週間持続した. 52週齢時に屠殺し, 腎組織について光顕で糸球体硬化を判定量的に測定した, 対照群の血糖と血圧はほぼ経時的に上昇し, 52週齢で最も高値を示した. TP群では血糖は対照群に比し低値であり, 血圧も対照群に比して低値であり, 52週齢では有意に低値を示した (p<0.01). 尿蛋白は経時的に増加したが, TP群では蛋白尿の増加は有意に軽度であった, 糸球体硬化度はTP群で有意に低値であった (p<0.01). OLETFラットに見られる糸球体硬化病変は, ACE阻害剤投与により進行が阻止された. その機序には耐糖能の改善, 血圧および糸球体内血行動態に及ぼす作用が関与していると思われる.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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