糖尿病
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43 巻, 2 号
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  • インスリン非依存性糖尿病モデルラットOLETFの腎病変の観察
    森野 正明, 吉田 孝子, 佐々木 望
    2000 年 43 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症の硬化性病変に対するアンギオテンシン変換酵素阻害剤の効果を検討するために, ヒト肥満型インスリン非依存性糖尿病モデルであるOLETFラットの糸球体病変を観察し, ACE阻害剤であるtemocapril (TP) の長期間投与が糸球体硬化病変に及ぼす影響を検討した. OLETFラットは2群に分けた, 対照群 (n=6) は水道水のみ, TP投与群 (n=6) はTP15mg/Lを溶解した飲用水を, 生後26週齢より投与開始し, 26週間持続した. 52週齢時に屠殺し, 腎組織について光顕で糸球体硬化を判定量的に測定した, 対照群の血糖と血圧はほぼ経時的に上昇し, 52週齢で最も高値を示した. TP群では血糖は対照群に比し低値であり, 血圧も対照群に比して低値であり, 52週齢では有意に低値を示した (p<0.01). 尿蛋白は経時的に増加したが, TP群では蛋白尿の増加は有意に軽度であった, 糸球体硬化度はTP群で有意に低値であった (p<0.01). OLETFラットに見られる糸球体硬化病変は, ACE阻害剤投与により進行が阻止された. その機序には耐糖能の改善, 血圧および糸球体内血行動態に及ぼす作用が関与していると思われる.
  • 鈴木 研一, 衰 群, 木村 真人, 後藤 由夫
    2000 年 43 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病性自律神経障害を診断するために, 圧受容体, 延髄, 交感神経・副交感神経反射弓のバランスを検討する評価系であるバルサルバ負荷 (VM) を行い検討した. VMはフィナプレス (Finapres ®) を用いて血圧, 脈拍変動を連続観察し副交感神経, 交感神経両者の介在するVM第4相の圧受容体反射を検討した. 指標は1. 頻脈潜時 (TL), 2. 徐脈潜時 (BL), 3. 負荷前値血圧復帰潜時 (BpL), 4, 血圧頂点潜時 (OvL) を用いた. 糖尿病群でBLが健常群に比べて有意に遅延しており副交感神経障害指標として有用である. 自律神経障害を定性的に評価するためには第4相のovershootの欠如 (144例中44例) があげられる. また, 糖尿病群でovershootがない群では出現群に比べてTLの優位な遅延があり交感神経障害指標として有用であると思われた.
  • 石橋 不可止
    2000 年 43 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    健常者 (C群) 39名およびmicroalbuminuria (MAU) 陰性 (I群: 27名) と陽性 (II群: 23名) のNlDDM患者50名を対象にL-arginine負荷 (LA) を行い, 前後1時間の尿中fibronectin fragment (FN-f) をELISA法にて測定した. さらに各群数名のLA前後の尿を濃縮後gelatin affinity columnでFN-fを単離し, SDS-PAGEにて3群の分子量分画を比較した. LAにより3群の尿中FN-fは2-3倍に増加し, LA前後とも尿中FN-fはC<NIDDM-I<NIDDM-IIの順に有意に (p<0.05) 増加した. LA後の尿中FN-fはAER (p<0.0001). アルブミンの糸球体濾過 (p<0.001) と正相関, 尿細管再吸収率 (p<0.0002) とは負の相関があった. LA後の尿中FN-f分子量は10-120kDaに分布し, NIDDM-IではC群に比し30kDa分画の相対的減少と48kDa分画の増加が, NIDDM-IIではさらに30kDa分画が相対的に減少していた, 以上より, 尿中FN-fの増力口はNIDDMでのMAU発症との関連が示唆された. FN-f分画の変化のMAU発症との関係については今後検討すべき課題と考える.
  • 岡田 泰助, 奥平 真紀, 内潟 安子, 倉繁 隆信, 岩本 安彦
    2000 年 43 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    18歳未満発見2型糖尿病の予後に学校検尿と治療中断が及ぼす影響を検討した. 対象は1980年から1998年までに東京女子医科大学糖尿病センターを受診した18歳未満発見2型糖尿病283名 (男142名, 女141名) である. 学校検尿で発見された『学校検尿発見群』は183名おり, 1974年以降この群の割合が5096を超し, 1992年以降は76.5%を占めていた.『学校検尿発見群』は『学校検尿以外発見群』と比べ, 治療中断の頻度および合併症の頻度, 重症度のいずれにおいても差異はみられなかった. 一方, 糖尿病と診断されてから当センター初診までに少なくとも1年以上医療機関を受診していなかった『治療中断あり群』は91名であった, 『治療中断あり群』は『中断なし群』と比べ, 合併症の頻度が高く (p<0.0001), 合併症は重症化していた (p<0.0001). 治療中断は罹病期間を考慮しても合併症発症に大きく影響を与えていた (p<0.01).
  • 若杉 英之, 船越 顕博, 井口 東郎, 横田 昌樹, 福冨 真理恵, 明石 哲郎, 國吉 政美, 大西 裕, 高瀬 元治, 福田 敏郎, ...
    2000 年 43 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    病変の出現部位は合致しないが, ムチン沈着症の中の浮腫性硬化症の合併と最終的に診断した膵性糖尿病の1症例について報告する. 主訴: 両側足背および両側下腿の皮膚の発赤・浮腫・硬化・疼痛. 臨床経過: 1986年, 膵癌の合併が示唆され膵頭十二指腸切除術が施行された慢性石灰化膵炎症例で, 膵性糖尿病が顕著となり, 術後の吸収不良症候群のため全身状態が悪化した場合は入院して高力ロリー輸液をはじめとする治療をおこなっていた, 1996年11月, 57歳のとき, 上記皮膚病変が出現しリンパ管炎様であったが, 生検所見は真皮から皮下組織にかけてのコラーゲンの増生とムチンが認められた. 栄養状態の改善にともない半年後には上述の症状は全く消失した.
  • 金森 晃, 土信田 文隆, 町田 充, 高田 哲秀, 中嶋 真一, 神 康之, 守屋 達美, 的場 清和, 藤田 芳邦, 矢島 義忠
    2000 年 43 巻 2 号 p. 147-150
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    49歳, 男. 罹病歴17年の重症の糖尿病性トリオパシーを合併した2型糖尿病. 足のしびれ感を癒す目的で両足趾および足蹠部に市販温湿布薬を貼付して車の運転を長時間行った. その後, 貼付部に水疱を形成し, 感染を併発して両足壊疽をきたした. 高血糖是正, 抗生物質投与, 免荷, デブリードマンなどの保存的治療により右足壊疽は治癒したが, 左V趾は中足骨切断術を余儀なくされた. 用いられた温湿布薬にはカプサイシンと同様の作用をもつノニル酸ワニリルアミドが比較的高濃度に含有されている. 本症例では温湿布薬が的確に使用されなかったために, ノニル酸ワニリルアミドによる接触皮膚炎が惹起され, さらに糖尿病性神経障害が存在するために皮膚刺激症状の認知が遅れ水疱形成をきたしたと考えられた, カプサイシンは糖尿病性表在性疼痛に対する治療効果が認められているが, 使用法を誤まると足皮膚潰瘍などの糖尿病性足病変の誘因になる可能性があり注意を要する.
  • 木下 公史, 三宅 隆史
    2000 年 43 巻 2 号 p. 151-153
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例63歳女性. 初診時, 随時血糖400mg/dlを超え, コントロール不良にもかかわらず, 不安定型分画を含む総HbA1cは8.3%であった. 食事療法, 経口血糖降下剤使用で, 総HbA1cは5.7%に低下したが, 食後2時間血糖値は200~300mg/dlを示し, 総HbA1cとの間に解離を認めた. 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) によるヘモグロビン分析では異常溶出ピークを認め, 等電点電気泳動, アミノ酸解析でβ鎖43 (CD2) のグルタミン酸がグルタミンに置換されたHb Hoshidaであると判明した. Hb Hoshidaに合併した糖尿病は, われわれが検索し得た限りでは本邦3例目である, 先の2症例では共にHbA1cの低値が発見の契機であった.本症例では糖尿病が当初コントロール不良であり, 異常ヘモグロビンの推測は困難と思われた. 家族内検索で, 長女にHb Hoshidaを確認したが, 糖尿病はなくHbA1c2.3%と異常低値を示していた.
  • 太田 嗣人, 番度 行弘, 田中 延善, 五之治 行雄
    2000 年 43 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例1は糖尿病歴10年の63歳男性で, 血糖コントロールはHbA1c9%台と不良であった. 平成9年12月25日側溝で左足を打撲し, 20日後より発熱と左膝関節痛が出現した. CRP高値 (24.6mg/dl) を示し, 左膝関節液培養よりStaphylococcus aureusが検出されたことより化膿性関節炎と診断された. 症例2は糖尿病歴3年の65歳女性で, 血糖コントロールはHbA1c7~10%台と不良であった. 平成8年5月15日より誘因なく右膝関節痛が出現した, CRP高値 (12.7mg/dl) を示し, 右膝関節液培養よりMethicillin resistant streptococcus epidermidisが検出されたことより化膿性関節炎と診断された. 両例とも当院整形外科入院の上, 切開排膿, 持続灌流, 抗生剤投与およびインスリン注射等の集中治療を施行し病態は改善した. 本症は高齢糖尿病患者に特に合併しやすく, 診断の遅れは敗血症死に至る危険性がある, 関節病変を伴う同様の患者を診る際は本症が合併する可能性を常に念頭においた対応が必要と考えられた.
  • 入院との比較
    住安 ギンコ, 泉 鈴子, 廣瀬 由紀子, 姫野 智子, 椋原 タキ子, 池田 知寿子, 田澤 正子, 松本 亜子, 柴 輝男
    2000 年 43 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    初めてのインスリン注射療法指導を外来で実施した患者に関し, その心理や満足度, インスリン療法への理解度, 注射手技, 血糖コントロールの状態を検討し, 入院して行った患者と比較した. 患者の心理, 満足度, 理解度はアンケートにより, 注射手技は看護婦により, 血糖コントロールはHbA1c値により, 評価した, 患者の心理, 満足度, 理解度は良好で, 外来群は入院群に比べ有意差を認めなかった. 注射手技も良好で外来群で有意に優っていた (p<0.05). 加齢とともに理解度や注射手技の実施率が低下するのが入院群で観察された (p<0.05), HbA1c値ではインスリン療法導入に伴い平均10.2%から7.5%へ改善し, 両群の間に差を認めなかった. 外来における初回インスリン注射療法指導は入院して実施した場合に比し遜色なく有効であった.
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