2000 年 43 巻 6 号 p. 449-454
症例は38歳男性. 30歳時に2型糖尿病と診断され一時当院通院するも血糖コントロールは不良であった. 1994年9月頃より口腔内の白苔, 味覚異常, 嚥下困難が出現し, 再度当院受診. 内視鏡検査で口腔・食道力ンジダ症と診断された. 抗真菌薬での治療に難治であり1998年3月血糖コントロールおよびカンジダ症の治療目的で入院となった. インスリン療法を開始し良好な血糖コントロールが得られるとともにカンジダ症は急速に治癒した. しかし退院後, 血糖の悪化に伴いカンジダ症が再発した.
食道力ンジダ症は免疫低下状態でしばしばみられ, 糖尿病でも血糖コントロール不良例や自律神経障害の強い例での報告が散見される. 本例は明らかな免疫不全がないにもかかわらず再発を繰り返し, 抗真菌薬のみでの治療には難治であった. しかし, 血糖コントロールの改善により速やかに治癒した. このことから, 感染症の予防や治療には厳重な血糖コントロールが極めて重要であると考えられた.