2001 年 44 巻 5 号 p. 393-397
症例は48歳, 男性. 家族歴に難聴, 網膜色素変性症, 糖尿病なし. 18歳時視野狭窄を指摘され網膜色素変性症の診断, 28歳時感音性難聴を指摘. 35歳時糖尿病を指摘され, 40歳時より経口血糖降下薬の服用開始. 1999年2月より感音性難聴の急激な悪化を認めたため当科入院. 現症では, 白内障, 高度の網膜色素変性で視力は光覚のみ. 聴力右783dB, 左115dBと感音性難聴を示した, HbA1c9. 5%と血糖コントロールは不良, 尿中CPR15μg/日, グルカゴン負荷試験にて△CPR0. 8ng/mlとインスリン分泌能の低下を認めた. ミトコンドリアDNA解析にて3243変異を認めた. 本症例は, 若年発症の網膜色素変性症と進行性の感音性難聴を特徴とするUsher症候群を合併したミトコンドリア遺伝子異常による糖尿病の稀な症例と考えられた