糖尿病
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臨床症状出現以前から臨床経過と膵島自己抗体の推移を観察し得た小児1型糖尿病の3例
浦上 達彦久保田 茂樹森本 繁夫似鳥 嘉一大和田 操
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2001 年 44 巻 8 号 p. 699-703

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抄録

学校検尿・糖尿病検診により発見され, 臨床症状出現以前から臨床経過と膵島自己抗体の推移を観察した小児1型糖尿病の3症例を経験した, 症例は何れも診断時には代謝異常が軽度であり, ICA, GAD抗体, IA-2抗体の何れか複数が陽性を示した. 診断後早期は何れの症例もインスリン治療を必要としなかったが, 臨床経過に伴いβ細胞機能が低下し診断後4~14カ月でインスリン治療を開始した. 膵島自己抗体の変動に関しては, 症例1では糖尿病の進行に伴いGADA, IA-2A抗体価の連続的な上昇を認め, インスリン治療開始時に最高値を呈した後急激な低下を認めた, 症例2ではGADAは陰性であったが, IA-2A抗体価はC-ペプチド値の低下と並行して徐々に下降した. 症例3では早期にインスリン治療を開始したが, 膵β細胞の休息を反映して膵自己抗体価の変動は緩やかであった. 学校検尿・糖尿病検診の普及により, 今後更に無症状時期からその臨床経過を観察し得る症例が集積されるものと期待される.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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