2001 年 44 巻 9 号 p. 751-755
29歳男性. 主訴は悪心・嘔吐. 糖尿病の既往, 清涼飲料水多飲なし. 徐々に肥満認め, 26歳時170cm140kg, BMl48.1. 胸やけ, 食思不振, 口渇多尿, 更に悪心・嘔吐にて緊急入院.高血糖脱水, ケトアシドーシスが認められたため輸液, インスリン投与を行った. インスリン量が多く漸減できず, 消化器症状が強いことから胃内視鏡検査を行い広範囲の著明な粘膜病変 (食道炎, 急性出血性胃粘膜病変, 十二指腸炎一以下AGMLと略す) を認めた, H2プロッカーにて消化器症状消失, インスリン注も9日目には中止となった. 抗GAD抗体は陰性で糖負荷試験では境界型を示した. 2型糖尿病症例におけるいわゆる「ソフトドリンクケトーシス」に合致せず, インスリン分泌の絶対的欠乏認めず, 著明な肥満に起因するインスリン抵抗性の増大が高血糖の原因となり, 更にケトアシドーシスが粘膜病変の増悪因子となり悪循環を繰り返した症例と考えられた.