糖尿病
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腎移植後のタクロリムス投与によりインスリン依存状態となった1例
金原 秀雄笈田 耕治石井 英東 征樹鈴木 仁弥秋野 裕信宮森 勇
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キーワード: タクロリムス, FK506, 糖尿病
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2003 年 46 巻 8 号 p. 663-666

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抄録
腎移植後の急性拒絶反応後に免疫抑制剤の一種であるタクロリムスを使用しインスリン依存状態となった症例を経験した. 症例は38歳, 男性. 15歳時にIgA腎症と診断. 29歳時に透析導入. 2000年 (平成12年) 10月, 当院泌尿器科にて死体腎移植術施行. 翌年3月, 急性拒絶反応にて入院. ステロイドのパルス療法とともに免疫抑制剤をシクロスポリン・アザチオプリンからタクロリムス・ミコフェノール酸モフェチルに変更. 同年5月中旬頃より尿糖陽性を認め, 口喝・多飲多尿等の症状が次第に増悪し, 6月12日, 血糖値606mg/dlで入院となった. 内因性インスリン分泌能の低下 (尿中C-peptide 14.0μg/day) を認めた. 入院時のHbA1cは5.9%であり急激に高血糖に至ったことが推定された. タクロリムス投与によりインスリン分泌障害をきたすことが知られており, 血糖を定期的に測定するとともに血中濃度をできるだけ低く抑え, 高血糖に際しては早期にインスリン治療を開始することが肝要と考えられる.
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