2003 年 46 巻 8 号 p. 667-671
症例は29歳, 女性.1990年頃より食行動異常および原因不明の肝機能障害を認め, 体重の増減は激しかった. 1999年体重が80kgから45kgまで減少したため, 2000年1月近医を受診した. 血糖高値および尿ケトン陽性より体重減少の原因として摂食障害に力口えて, 糖尿病のインスリン依存状態の関与も考えられた. 近医にてインスリン療法が導入され, 2月29日当院へ転院となった. 抗GAD抗体高値陽性 (225.3U/ml), 血中Cペプチド低値 (0.4ng/ml) を示し, 摂食障害合併の1型糖尿病が疑われた. 頻回にわたるインスリン注射のスキップにより, 血糖コントロールはHbA1c 15%以上と不良の状態であった. さらに, 自己免疫性甲状腺疾患による甲状腺機能低下症が顕在化し, 甲状腺ホルモン製剤が補充された. 2002年1月頃より体重減少及び下痢が持続し, 腹壁静脈の怒張が出現した. 単純腹部CTにて肝腫大, 腹水, 門脈圧亢進症を指摘され, 精査目的にて5月20日入院した. 腹部血管造影にて下大静脈の狭窄および肝静脈の閉塞を認め, Budd-Chiari症候群と診断した. 血糖コントロールについては強化インスリン療法が導入でき, HbA1c 8%, グリコアルブミン3096前後と比較的安定した状態を示している.