2003 年 46 巻 8 号 p. 673-677
症例は54歳, 女性. 1988年 (昭和63年) に白内障で眼科受診時に糖尿病と診断され, 1996年 (平成8年) からはインスリン療法が導入されていた. 2000年 (平成12年) 3月に食欲不振のためインスリン注射を自己中止し, 意識障害を主訴に当院来院, 糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡の診断で入院. 生化学的データ改善後も運動機能の回復が遅延し, 筋力低下が進行した. DNA解析の結果, 筋強直性ジストロフィー (Myotonic dystrophy; MD) と診断した. MDに伴う糖尿病は高インスリン血症を伴うことが多いとされるが, インスリン分泌過剰は証明されなかった. 本例は2型糖尿病の素因をもつものの, MDによる耐糖能異常が関与していることが示唆された. 現在までにMDに併発した糖尿病でケトアシドーシス性昏睡を発症した報告例はない.