日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌
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総移動距離制約を考慮したQuantiles Share Ratio最小化型の複数施設配置問題
古田 壮宏田中 健一
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2017 年 60 巻 p. 36-49

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抄録

本稿では,公平性を考慮した施設配置を求めるためのQuantiles Share Ratio (QsSR)最小化型の複数施設配置問題を提案する.所得格差を測る指標のひとつであるQuintile Share Ratio (QSR)は,所得の高い上位20%の所得の合計を所得の低い下位20%の所得の合計で除したものであり,この上位と下位の占有率を一般化したものがQsSRである.Dreznerら(2014)では,所得を施設までの移動距離に置き換えて,需要が線分や矩形上に連続的かつ一様に与えられた場合と,需要がネットワーク上に離散的に分布する場合を対象に,1つの施設の配置の公平性についての議論が行われている.本論文では,需要と配置候補場所が離散的に与えられる場合を対象に,QsSRを最小化するように,複数施設を同時に配置する数理計画問題としてモデル化し,二分探索を用いた解法を示す.さらに総移動距離の制約を考慮したモデルの拡張について示す.これらについて,荒川区の町丁目のデータを用いて,需要量がすべての需要点で均一の場合と,需要点ごとに異なる場合の2つのケースで,QsSRを最小化する配置の特徴や総移動距離の制約の有無による影響を分析した.結果として,総移動距離最小化問題の解と比較して,わずかな総移動距離の増分を許容することで,公平性を大きく改善する配置が得られることを確認した.

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© 2017 日本オペレーションズ・リサーチ学会
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