抄録
近世の旅日記や案内記から明治の紀行文まで、観光メディアとしては文学の独壇場だった。大正期には帝国日本の異郷にまで広がり、大戦を経て戦後の焼け跡で野田宇太郎によって「文学散歩」が始められた。それは網羅的な遺址、遺構収集であり、2010年代以降も改めて取り上げられ、自治体まちづくりにも欠かせない。野田「文学散歩」の30年後の高度成長期に浮上したのは都市テクスト論で、前田愛は文学の都市を「幻景」と呼び、作品のなかに描かれた都市を「復原」して行くことを試みた。その30年後の21世紀初頭、アニメ聖地巡礼に端を発するコンテンツツーリズムが観光学の一分野を築いた。これらを踏まえ、「観光文学研究」によって文学研究と観光研究を往還し、それぞれを理解する領域横断的アプローチを提示したい。