旅行会社やマス・メディアを介して、ある場所が記号化され観光対象となることが、観光者の欲求喚起や体験に大きな影響を及ぼすことはいうまでもない。本稿では、記号としての観光対象を構造的にとらえるためのユニークな視点を提示したD.マキァーネルの所説を振り返る。マキァーネルが『ザ・ツーリスト』で措定したアトラクション(マーカー/サイト/ツーリストの関係)という分析枠組みを参照しつつ、1980年代以降に展開した記号消費的な観光のありようをめぐる議論と、記号解読の諸相について検討を加える。また、近年のメディア環境において観光者自らがかかわる新たな記号化の現象について、端緒的にではあるが言及する。